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安倍首相のASEAN歴訪 冷静なリーダーぶりアピール

 安倍晋三首相は19日未明に帰国し、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟3カ国を歴訪する初外遊を終えた。海洋進出を図る中国へのけん制を狙い、経済、安全保障両面での連携強化を各国で宣言。一方で「タカ派」色を薄め、平和へのメッセージも交えるなど冷静なリーダーぶりをアピールした。

 「アジアの海よ、平安なれ」。首相は日程短縮で果たせなかった外交の基本方針「安倍ドクトリン」の演説で、こう呼び掛けるつもりだった。インドネシアのジャカルタで18日に明かしたそのうちの5原則には、海を「公共財」と位置付け、中国と対立する沖縄県・尖閣諸島の問題などを念頭に、法による解決を重視する考えを掲げた。

 他方、「台頭する中国は経済面で日本にプラスになる」とも発言。経済面で中国との結びつきも強いASEAN各国に配慮し、ともに成長する姿勢を示した。36年前のASEANとの約束である「軍事大国にならない」という「福田ドクトリン」への言及も演説原稿にあった。同行者の一人は「首相の冷静な発言は各国首脳から評価された」とみる。

 ただ、「米国のアジア重視を歓迎する」とし、日米同盟を基軸にASEANとの関係強化を図る方針も示し、対中国への強い意識をのぞかせた。同盟強化の文脈で集団的自衛権の行使を目指す方針も同行記者団に強調。平和外交を貫き通せるのか。懸念も残る。

 首脳会談中もアルジェリア人質事件の情報が日本から相次いで届き、ハイライトとなるはずの演説は行わないままとなった安倍首相。ASEANとの連携を深めつつ、中国との成熟した関係をどう築くのか。安倍外交は船出したばかりだ。(岡田浩平)

(2013年1月20日朝刊掲載)

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