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社説・コラム

『この人』 「その頬、熱線に焼かれ」を広島で演じる「On7」 尾身美詞さん

被爆の苦悩 強さに迫る

 「原爆でつらく苦しくても前を見て生きる。彼女たちの思いをどこまで演じられるのか…今も悩みますが、多くの人に想像し、考えてほしいと願います」

 被爆地での初演を控えて共演者らを誘い、痕跡を再び確かめながら歩いた広島で熱く、真剣に語った。

 東京で2015年に上演され評判を呼んだ「その頬、熱線に焼かれ」。今夏、北海道3都市での巡回や東京再演に続き、15、16日、広島市中区のJMSアステールプラザに立つ。

 On7(オンナナ)は、老舗5劇団の若手俳優7人が、13年に結成した演劇ユニット。自ら公演を企画制作し、歴史的な題材を鋭いせりふで描く劇作家古川健さんに新作を依頼した。

 それが、被爆10年後に渡米治療に臨んだ「原爆乙女」25人を巡る史実を基にした物語。米国では「ヒロシマ・ガールズ」と呼ばれて話題を呼ぶが、25歳の女性がニューヨークの病院で手術直後に死去した。

 舞台は、その一夜、仲間同士で胸にためた思いをさらけ出す。「私が演じるのは、顔の傷から閉じこもり、『ピカ』には負けんと思いながらも手術が怖くて…」。原爆の過酷さにとどまらず、人間の強さが広島弁で浮かび上がっていく。

 この演技から、一昨年に公開されロングランを続けるアニメ映画「この世界の片隅に」で主人公の義姉の声を吹き込む。初演を見た母からは、「もっと知られていい作品ね」と再演も促された。元キャンディーズの藤村美樹さんである。

 「広島でもし彼女たちに会えたら『生き抜いてくださり、ありがとう』と言いたい。お話を聞きたい」とも願っている。東京都世田谷区在住。(西本雅実)

(2018年8月7日朝刊掲載)

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