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ビキニ被曝 放射能の恐怖 フォトジャーナリスト島田興生さん写真集

 フォトジャーナリストの島田興生さん(73)=神奈川県葉山町=が、米国の水爆実験で放射能というポイズン(毒)に襲われた中部太平洋マーシャル諸島の人々を追った写真集「ふるさとはポイズンの島~ビキニ被ばくとロンゲラップの人びと」=写真=を出版した。

 A5判、72ページ。1985年から6年間、現地で暮らすなど、40年近く取材を続ける島田さんの写真に、元新聞記者でフリージャーナリストの渡辺幸重さんが文章を付けた。

 54年3月のビキニ水爆実験「ブラボー」では、直後にロンゲラップ島の住民が島を離れさせられ、3年後に島に帰った。しかし残留放射能の影響で白血病やがん、甲状腺障害、死産・流産などが相次いだため、「子どもたちの未来のために」と脱出を決断。85年に約200キロ離れた無人島メジャトに移住した。

 写真集では、島を離れる住民の苦渋の表情や新しい島での生活、被曝(ひばく)による病気との闘いなどに迫った写真が並ぶ。とりわけ故郷の島に戻りたい思いと、放射能の恐怖とのはざまで揺れる様子は胸を打つ。

 島田さんは「放射能汚染で島を追われたロンゲラップ住民の姿は福島第1原発事故の被災者と二重写しになる」と指摘。「ビキニ被災について知ってもらい、何かの参考になれば」と話している。

 巻末には、ブラボー実験で被曝した島民86人のリストを掲載。うち58人は、がんなどで昨年8月までに死亡した。旬報社。1575円。(宮崎智三)

マーシャル諸島での核実験
 米国が1946~58年、中部太平洋マーシャル諸島のビキニ、エニウェトク両環礁で67回(うち1回は上空で)実施した原水爆実験。特に54年3月1日のビキニ環礁での水爆実験「ブラボー」は、爆発力が広島原爆の約千倍の15メガトンに上り、大量の「死の灰」(放射性降下物)をまき散らした。ロンゲラップ環礁の住民らが事前の避難勧告なしに被曝(ひばく)。洋上のマグロ漁船第五福竜丸の乗組員も被曝、無線長の久保山愛吉さんが半年後に死亡した。放射能汚染は多くの漁船に拡大、マグロ廃棄が相次いだ。米本土や日本など広い範囲が汚染されたことは米公文書で確認されている。

(2013年1月21日朝刊掲載)

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