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仲間代表し式典参列 呉被爆者友の会会長・植田さん

 西日本豪雨で大きな被害を受けた呉市の被爆者団体、呉原爆被爆者友の会は、例年続けてきた広島市の平和記念式典への団体出席を断念した。しかし、会長の植田雅軌さん(86)=呉市苗代町=は娘の手を借り式典に駆け付けた。「来られない仲間のために」。そんな思いも胸に、原爆慰霊碑(中区)に向き合った。

 会員400人ほどの同会は、これまで20人程度でバスを貸し切り、式典に訪れていた。広島市と呉市を結ぶ広島呉道路は不通が続き、並行して走る国道31号も通勤時間帯は激しい渋滞が発生するため、団体出席を見送った。

 植田さんも参列を諦めかけていた。近くに住む長女の片山智由利さん(58)が車で送迎することを提案。例年より1時間早い午前5時前に出発した。「生きている限り、体験を伝えるのが役目」。毎年参列するのは、あの日、助けられなかった人たちへの悔恨の念からだ。

 旧制山陽中(現山陽高)2年生の時、現在の西区天満町辺りで被爆。動員学徒として勤めていた工場はつぶれ、女学生たちが下敷きになった。工場そばの食堂にいた植田さんは、助けを呼びに離れると、工場は火に包まれた。「生き地獄よ。ずっと負い目に感じている」

 会長を務めて約15年。会員は年々減り、存続も危ういと感じる。豪雨による自宅への被害はなかったが、会員に被害があるかどうかの把握はこれからだ。「活動を続け、核兵器廃絶を訴え続けたい」と誓った。(藤田智)

(2018年8月7日朝刊掲載)

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