×

ニュース

北朝鮮被爆者 医療支援訴え 首相「外交関係なく困難」

 安倍晋三首相は6日、広島市が中区のホテルで開いた「被爆者代表から要望を聞く会」に臨んだ。出席者から求められた北朝鮮で暮らす被爆者の医療支援について、終了後の記者会見で否定的な考えを示した。一方で、被爆樹木の保存に向けた補助制度を創設し、被爆建物の保存では補助を拡充する意向を表明した。

 北朝鮮被爆者の医療支援は、広島県朝鮮人被爆者協議会の李憲伯(リ・ホンベ)副会長(83)が実現を訴えた。会見で安倍首相は「重要な人道上の問題だが、北朝鮮との間には拉致、核、ミサイルの諸問題がある。外交関係がない現状を踏まえれば、適切な形で議論していくことは事実上、困難だ」と述べた。

 会合では、核兵器禁止条約への署名を求める意見も出た。安倍首相は「アプローチは異なるが、核兵器廃絶という目標は共有している。今求められているのは、立場の異なる国々の間の橋渡し役を担うことだ」と反論。記者会見では「参加しないとの立場には変わりはない」と明言した。

 一方で、被爆樹木や被爆建物の保存では「支援を拡充していく」と強調。同席した加藤勝信厚生労働相は「被爆樹木の保存は、市と相談しながら助成の検討を進める。被爆建物の保存事業では来年度、平和記念公園のレストハウスへの補助を検討し、基準額の引き上げも考える」と説明した。

 会合には、二つの広島県被団協など7団体の代表者たちが出席した。広島被爆者団体連絡会議の吉岡幸雄事務局長(89)は、禁止条約を巡る姿勢について「被爆者からの要望を聞く耳を持っていない」と憤った。(村田拓也、新山京子)

(2018年8月7日朝刊掲載)

年別アーカイブ