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非核化 願う 核の時代を終わらせるため力合わせる 在日韓国・朝鮮被爆者ら追悼

 朝鮮半島の非核化への動きの中で迎えた「原爆の日」。在日韓国・朝鮮人の被爆者や子や孫の世代が、平和記念公園(広島市中区)で鎮魂の祈りをささげ、核兵器廃絶への思いを強くした。

 「私のような苦労を、若い人にはしてほしくない」。広島県朝鮮人被爆者協議会副会長の李憲伯(リ・ホンベ)さん(83)=西区=は原爆ドーム前で手を合わせ、こうつぶやいた。

 10歳の時、江波町(現中区)の自宅で被爆。江波皿山(52メートル)の陰で大きなけがはなかったが、「その後も日々生きるだけで精いっぱいだった」。父を7歳で亡くし、母が鉄くず拾いなどをして5人きょうだいを育ててくれた。

 ことし4月の南北首脳会談や6月の米朝首脳会談で高まった、核のない「一つのコリア」への期待。だが、その動きは為政者の駆け引きのようにも映る。体制保証を迫る北朝鮮と、早期の非核化を求め経済制裁を続ける米国。それでも「対話が続いていることは喜ばしい変化。互いに歩み寄ってほしい」と願う。

 在日韓国人2世の李鐘根(イ・ジョングン)さん(89)=安佐南区=は、中区の広島YMCA国際文化ホールで被爆体験を語った。16歳の時、通勤中に荒神町(現南区)で被爆。顔や首に大やけどを負った。約180人を前に、「建物の下敷きになった人に、助けの手を差し伸べる余裕がなかった」と声を落とした。

 米朝のトップには、広島で被爆の実態を知ってほしいと望む。「駆け引きではなく核兵器の非人道性から非核化を考えてほしい」と力を込めた。

 この日、若い世代も平和に思いをはせた。原爆慰霊碑に献花した広島朝鮮初中高級学校(東区)高級部3年金智花(キム・チヨン)さん(17)は「差別のない平和な世界をつくる一員になりたい」

 「広島から始まった核の時代を終わらせるため力を合わせる」。韓国の高校生たちと来日した韓国原爆被害者2世の会会長の李太宰(イ・テジェ)さん(59)=釜山市=は南区で午前8時15分に黙とう。「植民地支配の歴史を踏まえ、南北統一へ日本政府にはもっと貢献してほしい」と述べた。(永山啓一、久保友美恵、田中美千子)

(2018年8月7日朝刊掲載)

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