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「命の教育 和歌山で」 遺族代表 小学校支援員黒瀬さん

 和歌山県の遺族代表、黒瀬由美子さん(57)=有田市=は、千羽鶴を携えて式典に臨んだ。支援員として勤める小学校で、児童と一緒に折った鶴だ。母の被爆体験を聞いて育った。平和への思いを、和歌山の子どもに伝えよう―。参列を機に、そう決意した。

 「広島駅で、ちょうど改札口にいる時だった」。黒瀬さんの母、三宅ユキ子さん(2013年に82歳で死去)は14歳で被爆した。建物の下敷きになりながらも生き延びた経験を折に触れ、語ってくれた。「だからこそ、あなたたちが今いる」とも。つながった命の重みを感じながら育った。

 母の勧めもあり、52歳で教員免許を取得。夫の転勤で和歌山県に移り住んだ。同県湯浅町の田村小で4月、支援員として勤め始めて間もなく式典への参列が決まり、千羽鶴作りを学校に提案した。

 母の被爆体験を次世代に伝えたいとの思いを抱えつつ、被爆地広島と遠く離れた土地で、どう伝えようかと考えあぐねていた。「わが事としてとらえてもらうのは難しい。でも今夏、鶴を折った記憶が、いつか広島に思いをはせるきっかけになる」。そう願って一羽一羽を糸で連ねた。

 完成した千羽鶴は式典後、平和記念公園の原爆の子の像にたむけた。児童には、夏休み明けに報告する。「広島について、もっと知りたい」。もし、そう尋ねられたら、母の体験を語ろうと思う。(奥田美奈子)

(2018年8月7日朝刊掲載)

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