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原子力規制委 事故対策の新基準案 島根原発稼働さらに遅れも

 原子力規制委員会が21日示した原発の新たな安全基準の骨子案では、完了に時間を要する対策が目立った。中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)では着手さえまだの対策もあり、規制委の運用次第では稼働の時期がさらにずれ込む可能性もある。

 原子炉が冷却機能を失った場合に備え、ポンプなどの注水機能や電源を置く「特定安全施設」。中電は規制委の骨子案を受け、検討に入るという。新設すれば数百億円はかかる見通し。

 原子炉格納容器の圧力を下げるためのフィルター付きベント設備も設計中の段階。設置の完了は「2015年度内」と、最短でも約2年2カ月先となる。

 「全て対応すれば、かなりの年月とコストがかかる。想像以上の内容だ」。中電幹部は骨子案をこう受け止める。「今後の議論を注視し、安全最優先で取り組む」とあくまで規制委に従う方針。ただ、福島第1原発事故以来、島根原発の安全対策に投じる金額は判明しているだけで約500億円にも上る。さらに安全対策が求められれば、経営への打撃となるのは必至だ。

 ただ、規制委は各設備の設置を一律に稼働条件とはせず、稼働後の完了も認めるとみる向きもある。骨子案の運用方法に関し、原発稼働の地元同意を判断する島根県の溝口善兵衛知事は「規制委が専門家の意見を聞いて決定する課題だ」と指摘した。

 一方、島根原発増設反対運動の芦原康江代表(60)=松江市=は「事故が起きてから反省しても遅い。原発が動く以上『絶対安全』はない」と強調。安全基準作りそのものに疑問を投げ掛けた。

 現在、島根原発1、2号機は定期検査で停止中。ほぼ完成した3号機も含め、いずれも稼働時期は不透明な状況が続いている。(樋口浩二、東海右佐衛門直柄)

<中電による島根原発の主な安全対策>

安全対策                   事業費         完了時期
免震重要棟の設置            約 75億円       2014年度内
フィルター付きベント設備の設置     非公表           15年度内
防波壁のかさ上げ              非公表            13年内
ガスタービン発電機の設置         非公表           11年12月
総事業費                  約500億円

【注】ベント設置は設計中のため総事業費に含まない

(2013年1月22日朝刊掲載)

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