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「ゲン」の象徴 麦育てよう 中区のNPO 修学旅行生向け穂の販売を計画

 広島市中区のNPO法人が、漫画「はだしのゲン」の象徴である麦を全国の子どもに育ててもらう活動を計画している。広島を訪れる修学旅行生たちに麦穂を販売。各地で新たに実った穂の一部が広島に届くサイクルを目指す。何度踏まれても真っすぐに伸び、穂を出す麦のように育て―。昨年12月に亡くなった作者の中沢啓治さんが作品に込めた思いを次代につなぐ試みだ。(田中美千子)

 考案したのはNPO法人一念発起(平田冨美子理事長)の事務局長沖本博さん(69)。大麦と小麦の穂各1本に、ゲンのイラストを添えて1袋300円程度で販売。購入者は育てた麦の穂を法人に送り返す。

 法人はその穂から販売用の穂を育てる。栽培を市内の作業所などに委託。障害者の工賃アップにつなげる考えだ。

 現在、沖本さんの自宅など約200平方メートルで麦を栽培している。収穫後の今夏から販売を始める方針だ。

 沖本さんは市を退職後、2004、05年度に佐伯区の知的障害者通所施設「皆賀園」の園長を務めた。園長時代、麦のように強く生きるゲンに共感し、中沢さんを訪ねて計画への協力を求めた。「にこにこ笑いながら『面白い。自由にやってください』と励ましてくださった」と振り返る。

 しかし、仲間や資金集めに苦慮し、実現を前に訃報に接した。沖本さんは「無念だが遺志を継ぎたい。麦の栽培を通し、中沢さんが訴えた『命の尊さ』を子どもたちに感じてほしい」と話す。

 中沢さんの妻ミサヨさん(70)は「夫も実現を心待ちにしていた。一人でも多くの子どもに夫の思いが伝わればうれしい」と期待している。

(2013年1月24日朝刊掲載)

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