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[イワクニ 地域と米軍基地] 騒音・安全策 道半ば 艦載機第1陣到着1年

移転で苦情 大幅増 飛行ルール徹底が課題

 米軍厚木基地(神奈川県)から空母艦載機約60機が移転し、極東最大級の航空基地となった岩国基地(岩国市)。騒音回数や苦情件数は大幅に増え、飛行ルールを巡る課題も浮かび上がる。第1陣到着から9日で1年。住民の安心安全の確保に向けた日米双方の取り組みはまだ道半ばだ。(松本恭治)

 2006年5月の日米合意から約11年の曲折を経て始まった艦載機移転。国の説明によると、第1陣のE2D早期警戒機5機に続き、11~12月、FA18スーパーホーネット戦闘攻撃機2部隊(24機程度)とEA18Gグラウラー電子戦機部隊(6機程度)、C2輸送機1機が到着した。今年3月、最後のスーパーホーネット2部隊(24機程度)が移り、8カ月弱で配備が完了した。

 移転が進むにつれ、基地周辺の騒音は悪化した。市が基地南側の尾津町に設置する測定器は5月、10年の滑走路沖合移設後で月別最多の1402回を記録。市に寄せられる基地関連の苦情も月別最多の903件に上った。いずれも2カ月連続の更新だった。

 一方で、空母ロナルド・レーガンの長期航海に合わせて艦載機が岩国を離れた6、7月、騒音と苦情は大幅に減少。住民生活への影響について、市や山口県は「1年ほどかけて運用実態を把握、検証する必要がある」とのスタンスだ。

 艦載機移転という環境変化に対応した運用ルール作りも課題として残る。市や県、国、基地でつくる岩国日米協議会の確認事項のうち、「盆期間中は飛ばないようにする」「正月三が日は訓練しない」は守られない例が目立つ。確認事項と基地の「航空運用マニュアル」との食い違いも明らかになった。

 協議会は1991年を最後に開かれていない。市は3月に確認事項を見直す意向を示したが、その後は「基地など関係機関と調整を進めている」と説明。表立った動きはいまだ見えてこない。

(2018年8月9日朝刊掲載)

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