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原爆ドームの壁面試料採取へ 25年ぶり広島市 耐震調査で

 世界遺産・原爆ドーム(広島市中区)の耐震性を調べている広島市は25日、ドーム壁面の一部を抜き取り、その強度を測る調査に入る方針を固めた。これまでの調査で「震度6弱でも致命的な損傷は考えにくい」とみる一方、さらに詳細なデータが必要と判断。近く文化庁に申請する。ドームから試料を採取する調査は25年ぶりで、1996年の世界遺産登録後初めて。

 市が2007年度から始めたドームの耐震調査の一環。今回の試料調査の結果も踏まえ、本格的な耐震補強工事をするかどうかを決める。

 市は12年1月、初のコンピューター解析による調査に着手。01年3月の芸予地震で記録した震度5弱▽震度5強▽市内で想定される最大規模の震度6弱―を想定して影響をシミュレーションした。

 その結果から、最大の地震動でも「即座に構造的な損傷が発生するとは考えにくい」と推定。ただ、はりなどの支えがないれんが造りの壁面など四つのエリアが揺れに弱いと判明した。市はこのエリアで試料を採取し、れんが自体の強度や、かつての保存工事で使われたエポキシ樹脂の注入状況を確認する。

 原爆ドームは95年に国の史跡に指定され、96年に世界遺産登録された。文化財保護法は現状変更する行為を制限しており、市は文化庁にこれまでの調査結果を報告し、採取を申請する。

 原爆ドームの保存をめぐっては、市は05年度に「平和記念施設」の保存・整備方針を策定し、少なくとも被爆100年までは現状保存し、大規模改修を避ける方針を示している。(加納亜弥)

原爆ドームの保存
 広島市は1967年、小規模な崩壊が進んでいたドームの形状を可能な限り保存するため、初の保存工事を実施。内部から壁面を支える鉄骨の設置やエポキシ樹脂注入などで補強した。その後、89年と2002年に保存工事をした。89年の保存工事以降、傷み具合を調べるための健全度調査を原則3年ごとに実施している。

(2013年1月26日朝刊掲載)

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