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4ヵ所に強い負荷 原爆ドーム 広島市が耐震調査

 広島市は29日、世界遺産・原爆ドーム(中区)の耐震性に関するコンピューター解析の結果を発表した。震度6弱の地震が起きてもすぐに崩壊する状況ではないものの、壁の一部に揺れに弱い部分があると判明。4月に壁をくりぬき、試料を採取して詳しく調査し、本格的な耐震工事が必要かどうか判断する。

 市は2007年度、ドームの耐震調査に着手。そのデータを基に12年1~10月、初のコンピューター解析を実施した。01年3月の芸予地震(震度5弱)▽30年以内に起こる可能性が高い地震(震度5強)▽市内で想定される最大規模の地震(震度6弱)―の3パターンで検証した。

 その結果、はりなどの支えがない四つのエリアに負荷がかかり、変形やひび割れを起こす可能性があると判明した。一方、芸予地震で被害がなかったことから市は「過去の保存工事で壁などに注入したエポキシ樹脂の効果が出ている」とみる。

 市は4月、四つのエリアの壁から試料を採取し、れんがの強度や樹脂の状態を調べて過去の保存工事の効果を確認する。結果を踏まえ、9月までに本格的な耐震工事を実施するかどうか判断する。

 松井一実市長は「しばらくは安心だが長期間で考えた時、補強の必要性についての詳細調査は必要。被爆70年をめどに検証したい」と話した。

 ドームは1995年、国の史跡に指定され、96年に世界遺産登録された。市は05年度、少なくとも被爆100年までは現状保存し、大規模改修を避ける方針を決定している。(加納亜弥)

(2013年1月30日朝刊掲載)

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