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社説・コラム

武器輸出 透明性求める NGOコントロール・アームズ マクドナルド代表に聞く

被爆者と共に訴えたい

 通常兵器が市民への攻撃などに使われないよう国際取引を規制する武器貿易条約(ATT)の締約国会議が、24日までの5日間の日程で、東京都内で開かれている。条約の発効を後押しし、会議にも出席している非政府組織(NGO)コントロール・アームズ(本部・米ニューヨーク)のアナ・マクドナルド代表が中国新聞のインタビューに応じ、被爆地と連携して条約の実効性を高めることに意欲を示した。(田中美千子)

  ―条約にはどんな意義がありますか。
 世界では毎日千人以上が武器や紛争の犠牲になっているとされる。生活を破壊され、人権を抑圧されている市民はさらに大勢いる。武器に対する規制が乏しい中、市民社会の10年に及ぶ運動の末、2014年に発効した初の国際条約がATTだ。

  ―履行状況は。
 条約は国際人道法に違反する行為に使われる武器の輸出を禁じているが、例えば内戦下のイエメンでは、条約加盟国の英国などがサウジアラビアに輸出した兵器が使われている。今月9日もスクールバスが空爆に遭い、子どもが多数死傷した。爆弾は米国(署名済みだが未批准)製だった。

 だから各国に取引の透明性、信頼性を高めるよう働き掛けている。どこに何がどれだけ輸出されるか、きちんと開示されれば、不正な流用も減らせる。貿易の中身を正しく報告するよう、締約国間で武器の定義を統一し、共通の報告フォームを設けるよう提唱している。

  ―日本に求める役割は。
 政府は条約違反を許さない姿勢を強く打ち出してほしい。また、被爆地の市民も核兵器に限らず、武器規制に関心を持ってほしい。通常兵器の過度な武装は各国間の敵意や軍拡競争を招き、市民の安全を脅かす。その点では核兵器と同じだ。核と戦争のない世界を粘り強く、勇敢に訴えてきた被爆者を尊敬する。政府も体験者の声は無視できまい。世界平和の実現へ、手を携えたい。

  ―被爆地には、核兵器禁止条約の早期発効と、日本政府による支持を願う声が多くあります。
 辛抱強くあることが大事だ。私たちが始動した03年、条約支持を表明したのはわずか3カ国だった。街頭行動や講演会を重ね、議員に手紙を書き、一般市民が発効を実現させた。市民の代表が政府だ。「私たちはこう願う」と訴え続ければ、政府は変えられる。

武器貿易条約
 戦車や戦闘機、小型武器など通常兵器の輸出入を一定に規制する。国連安保理決議に違反したり、国際人道法違反に当たる行為に使われる危険があったりする場合の取引を禁じ、対象兵器の輸出入の報告を義務付けている。2013年に国連総会で採択され、14年に発効。締約国は日本を含む97カ国・地域。米国やロシア、中国などは批准していない。

(2018年8月24日朝刊掲載)

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