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社説・コラム

[ハロー ユニタール] 「許し」発信 広島に敬意

 イラク・バグダッドで研修のコーディネートをしているファテン・アルウェリさん(28)がユニタール広島事務所に入ったのは、2016年のことでした。

 母国での30年余りにわたる圧政と戦争に次ぐ戦争。豊かな国土は荒廃し、人材も失われてしまいました。「5月の選挙後、いまだに誰が政府を率いるのか決まらない。国を導き、支えていける人材を育てることが急務なのです」とアルウェリさんは指摘します。

 イラクは20代以下の人口が全体の約65%を占める若い国でもあります。「若者がチャンスをつかめる環境づくりも重要」と仕事への情熱を語ります。

 広島に研修生と訪れ、「許し」のメッセージに衝撃を受けたと言います。「もちろん単純な道のりではなかったはず。それでも人々の総意として許しを発信していくまでに苦しみを乗り越えてきた方々に敬意を覚えます」。母国では、独裁と戦争、ISIS(いわゆるイスラム国)の脅威から、希望ある国づくりへと転換しつつありますが、民族や宗教など複雑な要因もあり、許しを実感するのは難しいそうです。

 8月6日には、修了生が参加する会員制交流サイト(SNS)で広島を思う声が次々に寄せられたとか。「それほど心をつかむ体験だったのだと思います。広島の皆さんに感謝を伝えたいですね」(守田葉子)

(2018年8月28日セレクト掲載)

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