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「平和の実現 対話が大切」 アジアのカトリック系大学から広島訪問

被爆証言聞き碑巡りも

 アジアのカトリック系大学の学生や教職員が8月下旬の6日間、広島市中区のエリザベト音楽大に集い、平和教育の在り方について学んだ。学生たちは被爆者の証言や教授の講演を聞き、平和の実現に向けた被爆体験の継承や民族間の相互理解の大切さをかみしめた。(久行大輝)

 開催されたのはASEACCU(アセアック、東南・東アジアカトリック大学連盟)の総会・学生会議。フィリピン、インドネシア、韓国、タイ、台湾、オーストラリア、カンボジア、日本の8カ国・地域の約200人が参加した。

 学生たちは、エリザベト音楽大や平和記念公園で被爆証言を聞いたり碑巡りをしたりした。生後8カ月で被爆した近藤紘子さん(73)=兵庫県三木市=からは、出血や高熱など放射線の急性障害に苦しんだことなどの説明を受けた。「こんな思いを誰にもさせてはならない。核のない世界という希望をあなたたちに託したい」との訴えに、学生たちは真剣な表情でうなずいていた。

 フィリピンのサントトマス大4年ジョン・デネル・クルーズさん(20)は「被爆体験に衝撃を受けた。被害の実態を母国に伝えたい」と受け止め、「美しい街に復興を遂げた広島の歴史に学び、私たちの世代の平和構築に生かしたい」と語った。

 平和教育に関する講演もあった。包括的平和教育が専門の清泉女子大(東京)の松井ケティ教授(64)は「ヒロシマは悲しみ、憎しみを乗り越え、暴力を否定し、和解や対話の重要性を投げ掛けている」と指摘。「私たちは育った環境によって考え方が異なるが、物事の違った見方を養うのが平和教育だ」と述べた。

 講演を聞いたインドネシアのアトマジャヤ・ジョグジャカルタ大4年フインセン・プラヨーゴさん(21)は「平和の実現には、異なる民族や宗教の人たちが理解し合うことが重要だと分かった。世界を取り巻く問題に向き合い、さまざまな国の人と語り合っていきたい」と話していた。

 アセアックは約80大学が加盟し、1993年から毎年、総会を開いている。国内での開催は2004年の南山大、11年の上智大に続き3回目。今回はエリザベト音楽大が創立70周年を記念して招致した。

 同大の川野祐二学長(59)は「互いの価値観を尊重することが平和への第一歩となる。参加した学生が国内外の同世代と意見交換できた意義は大きい」と成果を強調した。

(2018年9月3日朝刊掲載)

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