×

ニュース

野村マサ子さん死去 「ピカの村」最後の妻

 原爆に夫を奪われた70人以上の妻が戦後を生き抜いたことで知られる広島県川内村(現広島市安佐南区川内地区)で、残された妻のうち最後の一人だった野村マサ子さんが8月31日に亡くなっていたことが分かった。97歳だった。

 川内村では1945年8月6日、国に命じられ、国民義勇隊として爆心地付近の建物疎開作業に動員されていた住民約200人が全滅した。村が畑作地帯だったため、残された妻たちの多くは戦後、農業で生計を立てた。市郊外にありながら多くの遺族が苦難を強いられ、川内は「ピカの村」とも呼ばれた。

 野村さんは、義勇隊の一員だった夫を亡くした当時は24歳で、自らも入市被爆した。戦後は田畑を耕しながら一人娘を育て上げた。その証言は、庄原市出身の民俗学者、故神田三亀男氏が著した「原爆に夫を奪われて」(82年)にも収録されている。地区の原爆犠牲者の慰霊祭に出向き、子どもたちに自身の体験や平和への願いを語ることもあった。

 残された妻たちは戦後、毎月6日に地元の寺で月命日の法要を営み、供養してきた。高齢化が進み、2013年に野村さんが最後の一人となったが、法要はしばらく続けた。近年は体調を崩し、自宅そばの福祉施設に入っていたという。葬儀は近親者のみで済ませた。

(2018年9月6日朝刊掲載)

『ピカの村』 川内に生きて 悲しみに耐え 女性強く 夫たちは義勇隊で被爆死 心寄せ合い重労働

年別アーカイブ