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内部被曝を共同研究 日露の科学者 人体への影響探る

 広島とロシアの科学者たちが3日、内部被曝に関する共同研究に取り組むことを決めた。広島原爆をはじめ、いまだに分かっていない部分が多い内部被曝の人体影響を探り、実態解明を目指す。

 広島側の科学者は、広島大の星正治名誉教授(放射線生物・物理学)と、広島大原爆放射線医科学研究所の大滝慈教授(応用統計学)。

 この日、2人が内部被曝をテーマに廿日市市で開いた会合で提案。出席したロシア政府の研究機関、ブルナシアン連邦医学生物物理学センターのセルゲイ・シンカレフ氏をはじめとする物理学者たち5人が賛同した。

 研究テーマの一つは、広島原爆で放射能を帯び、広範囲に飛散した土ぼこりが与えた影響。星名誉教授は飛散状況をシミュレーションするためのサンプル土壌を広島市内で収集している。ロシアの学者は、飛散した範囲や内部被曝線量の推計作業に加わる。

 さらに、原爆投下直後に降った「黒い雨」や、旧ソ連時代の1986年に起きたチェルノブイリ原発事故に関するデータも共有し、内部被曝の研究に生かす。来年のこの時期に次回会合を開き、研究の進み具合を報告することを決めた。

 大滝教授たちのグループは被爆者のデータの解析で、爆心地から約1・2~2キロで被爆した人の固形がんによる死亡危険度(リスク)について、爆発時に浴びた初期放射線量より、残留放射線や黒い雨などの放射性降下物による間接被曝の方が影響が強い可能性があると分析している。

 星名誉教授は「爆心地から離れた場所で脱毛した人がいるなど、爆発時に浴びた放射線だけでは説明できないことがある。最新の知見を持ち寄り、解明を目指したい」と話している。(田中美千子)

(2013年2月4日朝刊掲載)

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