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旧日銀広島支店の復元工事 3度目も入札不調 建設業の人手不足響く

 広島市が被爆建物の旧日本銀行広島支店(中区)を、1950年代の復旧工事後の姿に復元して博物館にする事業で、4日に実施した入札が不調だったことが分かった。入札不調は3度目で、建設業に広がる人手不足の影響を受けた。予定していた2019年度の完成は困難な見通しで、市は事業内容やスケジュールの再検討を迫られている。

 旧日銀広島支店は市重要文化財。復元工事では文化的価値を高めるため、被爆時にガラスが刺さった跡が残る壁などを保存し、後で取り付けた天井板や床材を撤去したり、壁を塗り直したりする。市は4日、文化財補修の実績がある大手ゼネコンなど11社を対象に指名競争入札をしたが、応札がなかった。

 17年10月の最初の入札では1社が応札したが、再入札を含めて予定価格を上回った。18年3月は応札がなかった。市などによると、20年東京五輪の関連工事による人手不足に加え、リニア中央新幹線に関わる談合事件などで大手ゼネコンの指名停止が相次ぎ、入札への参加業者が減ったことも影響したとみられる。

 工期は当初、17~19年度の3カ年だったが、18~19年度の2カ年に変更していた。今回の不調で、さらなる見直しは必至となった。市文化スポーツ部は「すぐに入札をやり直しても状況は変わりそうにない。時間をかけ、工事内容や事業の進め方などを再検討したい」としている。

 旧日銀広島支店は1936年建設で、鉄筋3階地下1階延べ3214平方メートル。爆心地の南東約380メートルにある。改修後は2、3階部分に海外移民の歴史などを紹介する博物館を設けるほか、国重要文化財への指定を目指す。(明知隼二)

(2018年9月8日朝刊掲載)

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