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「黒い雨」解析結果議論 広島で17日シンポジウム

放影研「がんリスク増なし」

専門家「データ活用不十分」

 「黒い雨」と低線量被曝をテーマにしたシンポジウムが17日午後1時半~5時、広島市中区の原爆資料館東館地下で開かれる。放射線影響研究所(放影研)が昨年12月に公表した、放射性降下物を含む「黒い雨」を浴びたという約1万3千人のデータの解析結果について、医師や研究者が意見交換する。

 まず、放影研の大久保利晃理事長と小笹晃太郎疫学部長が、黒い雨を浴びたことでがんになるリスクが高まる傾向は見られないとする解析結果について説明。長崎県保険医協会の本田孝也会長や、広島大原爆放射線医科学研究所(原医研)の大滝慈教授、広島市立大広島平和研究所の高橋博子講師を加えた5人で議論を深める。

 放影研は解析に当たって、急性症状については「同じ聞き方をしておらず、科学的な分析が困難」との理由から対象としていない。このため、専門家からは「貴重なデータを十分に活用していない」などと解析の継続を求める声が出ている。

 シンポは、日本ジャーナリスト会議広島支部の主催。定員150人。参加費500円(資料代含む)、学生無料。申し込み不要。Tel090(7307)1862(沢田さん)。

放射線影響研究所(放影研)の「黒い雨」データ
 1955~61年ごろ、広島と長崎の約12万人に面接して聞いた質問に対する回答の一部で、「原爆直後雨ニ遭イマシタカ?」の問いに約1万3千人が「Yes」と答えていた。大半が広島の人で、雨に遭った場所や、脱毛、発熱など14種類の急性症状の有無と程度、発症時期なども尋ねている。このデータを放影研が保管していたことが2011年11月に判明。放影研は、広島市や被爆者団体などの要望を踏まえて解析を進め、12年12月、結果を公表した。被爆後間もない時期に実施した、放射性降下物を含む「黒い雨」の健康影響に関する、これほど大規模な調査例は、ほかには存在しないとみられ、解析結果が注目されていた。

(2013年2月4日朝刊掲載)  

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