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社説・コラム

天風録 『沖縄 もう一つの闘い』

 ドーナツ状に市街地が広がる沖縄の宜野湾市。穴に当たる中心部に米軍普天間飛行場がある。かつては集落や村役場、国民学校があった所だが、沖縄戦のさなか銃剣とブルドーザーで米軍に土地を奪われた▲ところがネット上ではデマが散見される。飛行場はもともと田んぼの中にあり、商売のため人が周りに住みだした、と。「うるさいのは分かるが、選んで住んだのは誰か」と続き、事実誤認のまま矛先を住民に向ける▲基地がないと経済が成り立たない―といった誤解も含め、沖縄を巡るデマは枚挙にいとまがない。昨年起きた米軍機の部品落下事故では、保育園による「自作自演」といった話まで流布された。もはやデマのレベルを超えていると言えよう▲きのう告示された県知事選を巡っても、全国紙や政党の世論調査とされるデータが飛び交っているらしい。地元紙の報道では、双方とも調査自体を否定しているから偽情報なのだろう。では一体誰がなんのために。よく分からないだけに薄気味悪い▲デマに左右されないようチェックをNPO法人が始めた。基地問題が争点とならざるを得ない選挙の裏で進む、もう一つの闘いと言える。そちらも目が離せない。

(2018年9月14日朝刊掲載)

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