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広島大本部跡地 広島市、無償取得し再開発前進 保存・活用策を検討

 広島市などが進める中区の広島大本部跡地(11・4ヘクタール)の再開発で、市が跡地内の被爆建物の旧理学部1号館と敷地を、所有者の国立大学財務・経営センター(千葉市)から無償で取得することが8日、分かった。市とセンター間の土地交換計画が頓挫。市は、再開発のネックとなっている1号館を引き取ることで打開を図る。(藤村潤平)

 市が取得するのは、1号館の建物と敷地0・6ヘクタール。市は2012年度中に取得手続きを終えた後、1号館の耐震調査を実施。市と広島大による「知の拠点」構想に基づき、具体的な保存・活用策を練る意向だ。

 民間が参入しやすい用地を生み出すため市とセンターは10年3月、市東千田公園(3ヘクタール)の一部と1号館を含む敷地(4・4ヘクタール)の一部を交換する計画で合意。だが、土地売却の見通しが立たないことや地元住民の反対で交換は頓挫した。

 今回の無償譲渡は、早期に跡地内の土地を売却したいセンターが再開発を前進させるため、被爆建物の保存・活用に前向きな市に協力した形になる。

 1号館を市が取得することで、再開発は残るセンター所有地3・8ヘクタールの売却が焦点になる。市などは、12年度中にも民間事業者を募集する手続きに入り、13年度中の再開発着手というスケジュールを描く。

 一方で広島大は、跡地内の東千田キャンパス(1・8ヘクタール)で、「知の拠点」構想の中核となる知的人材育成センターの建設を計画している。15年4月の開設を目指し、学内にワーキンググループを設置。地元の公私立大と連携した共同教育や研究、社会人教育の受け入れ拡大などを検討している。

旧理学部1号館
 1931年に広島文理科大本館として完成した。鉄筋3階建て延べ約8300平方メートル。爆心地から1・4キロで被爆し、外郭を残して全焼した。戦後に補修され、49年の広島大開学で理学部1号館となった。同大本部跡地の再開発事業予定者だったアーバンコーポレイション(2008年に経営破綻)などが07~08年に実施した調査で、鉄筋の腐食やコンクリートの劣化が深刻で耐震性能が低い状況が判明した。

(2013年2月9日朝刊掲載)

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