×

ニュース

被爆者ら怒り・落胆 伊方原発再開決定「政権に忖度」

 「原発を推し進める現政権に忖度(そんたく)した判断だ」―。四国電力伊方原発3号機の運転を認めた25日の広島高裁決定を受け、運転差し止めを求めていた住民や被爆者からは怒りと落胆の声が広がった。昨年12月の仮処分決定では、火山リスクを重く評価し、運転の差し止めを命じた高裁。四国電が申し立て、別の裁判長の下で審理が進められた異議審では「国民の大多数は問題にしていない」とはねつけた=1面関連。(加納亜弥、松本輝)

 「放射線被害に原発の反対派も推進派もない。みんなが被害を受けるということを、なぜ裁判所は理解してくれないのか」。この日の高裁決定を受け、運転差し止めを求める住民や支援者が広島市中区で開いた記者会見。被爆者の堀江壮さん(77)=広島市佐伯区=は声を震わせた。

 堀江さんは4歳の時、爆心地から約3キロの己斐町(現西区)で被爆。軍人で爆心地近くにいた父は原爆投下の6日後に亡くなった。自らも悪性リンパ腫と闘いながら「孫世代に安全な世の中を」との一心で活動に取り組んできた。「もうこれ以上、ヒバクシャを増やしてほしくない」

 今回の異議審で注目されたのは「火山と原発」の関係だった。昨年12月の仮処分決定が運転差し止めの根拠とした阿蘇山の破局的噴火のリスクについて、三木昌之裁判長は「発生頻度は著しく小さい」と言及。噴火リスクが根拠をもって示されない限り「安全性に欠けるところがないとするのが、現時点での社会通念」と踏み込んだ。

 住民側の弁護団の大河陽子弁護士は「その『社会通念』は何が根拠か。国が対策をせず国民が知らないままの状況なのに、司法が破局的噴火の危険性を許容している」と指摘する。最高裁への抗告は「戦略的に得策ではない」と見送る方針だが「何らかの方法で戦い続ける」と強調した。

 一方の四国電も中区で記者会見を開き、滝川重理登原子力部副部長が「非常に安堵(あんど)したのが率直な気持ち」と述べた。3号機は10月1日に燃料を装塡(そうてん)。同27日に原子炉を起動させ、11月28日には営業運転を始めるという。

 伊方原発3号機に対する同様の仮処分は、高松高裁や山口地裁岩国支部などでも係争中。滝川副部長は「残りの係争も一つ一つ勝っていくしかない。もろ手を挙げて喜べる状況ではない」と言葉を継いだ。

(2018年9月26日朝刊掲載)

年別アーカイブ