×

平和行事

『美術散歩』 被爆地から発信

◎ヒロシマ・アート・ドキュメント2018 10月3日まで。広島市中区袋町、旧日本銀行広島支店

 国内外の作家が被爆地から発信する現代美術展。25回目の今年は、日本とフランスから10人が参加した。シリアや中国ゆかりの作家もいる。

 島久幸さん(千葉県)のインスタレーション「紙の民(鉛の亀)」は、鉛板で亀の姿を構成した。手足のようにも見える造形は、福島第1原発の事故後、放射能の除染で出た砂を入れる袋がモチーフになっている。多層的なイメージをはらみ、思考を促す。

 佐古昭典さん(広島市)の「Peace Park」は、平和記念公園の風景をパステル調の色彩で描いた。木々の葉をハトに見立てた形にし、機知に富む。中国出身の范叔如(ハンシュウルウ)さん(同)は、東日本大震災後に日課として描いてきたドローイングを出展。一枚一枚が時間の集積を思わせる。

 巨大な写真のタペストリーでロボットと人間の境界を考えさせるのは、フランスのジュスティーヌ・エマさん。人間型ロボットのリアルな皮膚の合間から、複雑な機械がのぞく。

 シリアに家族の古里があるフランスのバディ・ダルルさんが、被爆者の佐々木禎子さんの物語に想を得て制作した映像などもある。クリエイティヴ・ユニオン・ヒロシマ(伊藤由紀子代表)の主催。(上杉智己)

(2018年9月29日朝刊掲載)

年別アーカイブ