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ヒロシマ より身近に 13年度から原爆資料館 57億円かけ5ヵ年全面改修

放射線被害 復興も重点

 国重要文化財の原爆資料館(広島市中区)の全面刷新に向けた5年がかりの工事が、2013年度から始まる。本館の耐震化を含め総事業費57億円を投じる工事は1955年の開館以降、最大規模。広島市は一瞬で都市が壊滅した被爆の惨状をより深く伝えるため展示内容や見学ルートを新たにし、2018年4月の再オープンを目指す。(田中美千子)

 工事は資料館入り口がある東館から着手する。建築家丹下健三(1913~2005年)が設計し、国重文の本館は間もなく築60年を迎える。老朽化が進み、本格的に耐震補強する必要に迫られている。市は外観を変えない工法を文化庁と協議中。13年度は外壁や柱の一部を削って劣化度を調べる。

 市は7日発表した13年度一般会計当初予算案に、両館の工事や調査の経費など計4300万円を計上した。

 耐震化に合わせ、若い世代に都市と市民の暮らしを破壊した原爆被害の惨状が伝わるよう展示内容をリニューアルする。本館は「被爆の実相」、東館は広島の復興、核兵器廃絶と平和な世界を求めるまでの歩みなどを「自ら学ぶ」ことをテーマとする。被爆資料を組み合わせた集合展示や、原爆投下前後の街の様子を投影するパノラマ模型が加わる。

 見学ルートは大幅変更し、出入り口を東館に統一する。来館者はまず、新設するエスカレーターで東館3階に上がり、パノラマ模型を見た後、被爆資料がメーンの本館に移動。本館では福島第1原発事故などを受けて拡充した放射線被害の展示に触れる。

 再び東館に戻った後、3階や2階で被爆後の復興や世界の核被害などを学ぶ。

 東館、本館ともに本格工事の間は閉館する。東館は14年度から段階的に閉館し、本館の工事が始まる16年度中に再オープンの予定。本館は来館者が多く見込まれる被爆70年の15年度は開館し、16、17年度を閉館とする。

(2013年2月8日朝刊掲載)

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