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地上イージス反対 山口県阿武町・花田町長に聞く

まちづくり台無し 交付金などいらない

 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を巡り、候補地に隣接する山口県阿武町の花田憲彦町長が反対表明してから20日で1カ月。防衛省は4度目の住民説明会を終え、近く現地調査に入る。「北朝鮮の脅威」を理由に計画を進める国に対し「まちづくりを台無しにする」と反発を強める花田町長に話を聞いた。(和多正憲)

  ―なぜ反対表明を。
 最大の理由は、町が進めるまちづくりと全く相いれないからだ。人口減少が進む中、Iターンなどの移住者に「選ばれるまち」を目指してきた。実際、自然豊かな地域で子育てしたいと移り住む人が増えている。だが、今は「ミサイル基地ができるのなら住みたくない」との声が出ている。これまでの町の努力が台無しになる。本当に悔しい。

  ―国は調査で住民の不安を拭いたいとしています。
 まちづくりへの影響は、国がどれだけ調査しても解決できない。そもそも最初から国は住民目線でない。防衛省の立場での説明に終始している。全てが国側の都合で拙速に進んでいる。

  ―説明会ではミサイルの落下物や電磁波を懸念する声が相次ぎました。
 北朝鮮を迎撃した場合、ミサイルは町の上空を通過する。切り離されたブースターが陸上に落下しても、国は「弾道ミサイルが直撃する被害とは比べものにならない」と説明した。犠牲者の大小をてんびんにかける発言だ。レーダーの電磁波の人体への影響も有識者の説明はあいまいなまま。全く不十分だ。

  ―一部で配備に伴う交付金に期待する声もあります。
 町の昨年度決算での実質公債費比率はゼロ。県内の市町で唯一だ。単独町でも健全財政でやってきた。交付金などいらない。そんなものに頼らなくても行政運営できる。配備によるデメリットの方が大きい。

  ―解決策はありますか。
 弾道ミサイル防衛(BMD)は否定しない。防衛政策は国の専管事項との考え方も分かる。ただ、国と地方は対等な関係。私は「国防だから仕方ない」と住民を説得する側にはならない。あくまで住民の立場から反対を続ける。これ以上説明を続けても私の考えは変わらない。国はイージス艦増設による対応や海上の埋め立て地への配備など「第三の着地点」を真剣に検討するべきだ。

山口県阿武町
 山口県北の日本海沿いに位置する。総面積約116平方キロ。人口約3300人(8月末時点)。萩市の陸上自衛隊むつみ演習場に隣接する。国は演習場への進入路として町有地約1300平方メートルを借り上げている。

(2018年10月21日朝刊掲載)

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