×

ニュース

トランプ大統領 INF条約離脱を表明 「核廃絶に逆行」 被爆地広島 怒りの声

 共同通信によると、米国のトランプ米大統領は20日、米国と旧ソ連が結んだ中距離核戦力(INF)廃棄条約から離脱する方針を表明した。条約を引き継いだロシアが違反してきたと非難するとともに、中国による中距離ミサイル開発も批判した。

「核兵器廃絶に逆行」 被爆地広島 怒りの声

 トランプ米大統領が中距離核戦力(INF)廃棄条約からの離脱方針を表明したことに、被爆地広島で21日、「核兵器廃絶に逆行する」と怒りの声が上がった。核兵器禁止条約に米国とともに背を向ける日本政府に対し、強い姿勢で米側へ核廃絶を迫るよう求める声もあった。

 INF廃棄条約は1987年、米国と旧ソ連の間で調印された。「びっくりし、がっかりした。核兵器をなくすための歴史的に重い条約。一人の大統領が簡単に覆してよいものではない」。広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之副理事長(76)は突如、離脱方針を表明したトランプ氏を非難した。「トランプ大統領には73年前、広島で何が起きたのかを学んでほしい」とも述べ、早期の被爆地訪問を働き掛けるよう日本政府に求めた。

 トランプ政権は2月、小型核兵器の開発方針などを盛り込んだ「核体制の見直し(NPR)」を公表。昨年12月に初の臨界前核実験をしていたことが今月、判明した。

 「米国の進む道に不安を感じている」。もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(74)は憤りをあらわにした。「核兵器廃絶に向け、保有国を巻き込んで議論する必要がある」と指摘。日本政府が核兵器禁止条約を支持し、主導的な役割を果たすよう訴えた。

 市民団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」(HANWA)の森滝春子共同代表(79)も「核兵器廃絶を求めるヒロシマと世界の民衆の思いを踏みにじっている」と批判した。「核を威嚇だけでなく、使える兵器として誇示しようとする表れ。米ロを中心に軍拡競争が起きかねない」と危機感を強めた。(江川裕介、東谷和平)

(2018年10月22日朝刊掲載)

社説 INF廃棄条約 米離脱 核の冷戦 後戻りさせぬ

年別アーカイブ