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被爆樹木 対話の土台に カナダの写真家 広島・長崎で撮影

日英併記 作品集出版目指す

 カナダ・トロント市の米国人で、写真家のケイティ・マコーミックさん(59)が広島と長崎を訪れ、被爆樹木や被爆建物の撮影を行った。地元のライアソン大の映像芸術学部で准教授を務める傍ら、同市在住の被爆者サーロー節子さん(86)が代表を務める平和団体で昨年から一緒に活動する。今後、写真集出版を模索している。(金崎由美)

 広島・長崎訪問は4回目となる。広島市では陸軍被服支廠(ししょう)(南区)のほか、千田小(中区)など被爆樹木のある市中心部の小学校を訪問した。子どもたちの平和への思いに触れようと児童と交流の場も持った。

 爆心地から1・2キロの天満小(西区)では、熱線に焼かれて幹に穴が開いた被爆樹木のプラタナスを校庭で撮影した。6年生42人の歓迎を受け、プラタナスの再生や戦後復興について児童の学習発表に聞き入った。

 マコーミックさんは「あの日に受けた幹の傷を抱えながら、原爆被害を伝え続ける樹木に感銘を受けた。平和のシンボルだ」と熱心に語り、自分の撮った作品を披露。6年生の田辺綾花さん(12)は「マコーミックさんの被爆樹木への思いと私たちの平和への願いを伝え合うことができた」と喜んでいた。

 マコーミックさんは初めて被爆地を旅した10年前、「原爆を使った米国の首都には戦争犠牲者をたたえる記念碑が並ぶが、広島では資料館も大通りも公園も、『平和』を願う名前。戦争の捉え方の落差に衝撃を受けた」という。

 写真集の出版を目指すのは「米国とカナダでは原爆投下は必要だったという一方的な解釈が根強い。皆が歴史を誠実に見つめ直すきっかけをつくりたい」という思いからだ。サーローさんからも「若い世代の平和教育に役立つはず」と励まされた。日英併記にし、自分の作品が日本、米国、カナダの若者の対話の土台になることを願う。

(2018年10月22日朝刊掲載)

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