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社説・コラム

『私の学び』 シンガー・ソングライター 瀬戸麻由さん

平和の輪 歌声で広げる

 平和を語り合う広島のカフェ「ハチドリ舎」でスタッフをしながら、シンガー・ソングライターとして活動している。大学時代、ピースボートの船旅で被爆者とともに世界を巡った。核兵器をなくし、平和な世界をつくるためにはどうすればいいのか。たどり着いたのが、歌を通して伝えることだった。

 中学の時に読んだ本に心を動かされた。著者の上泰歩さんは、ピースボートの旅でカンボジアの地雷原を訪問。19歳の時に自転車で日本縦断し、地雷の廃絶を訴えた体験をつづっていた。自分にできることを考え、行動に移した上さんに憧れを覚えた。

 英語が好きで、「世界を見たい」と思っていた。大学進学で東京暮らしを始め、ピースボートの事務所を訪ねた。スタッフをしていた上さんにも会えた。2011年の最初の世界一周では、上さんが携わり、被爆者が各地で証言するプロジェクトを手伝った。この旅で初めて被爆証言を聞いた。祖母は被爆者だが、体験をあまり語らなかった。被爆者と3カ月間接し、原爆は現実に起きたことだと肌感覚で理解した。

 13年の3回目の航海で、ピースボートが募った「おりづるユース特使」に選ばれ、核廃絶を訴える被爆者を支えた。関心のない人たちに被爆者の思いをどう伝えるかを常に考えていた。「この世界から恐ろしい核兵器をなくしたい」。その気持ちがどんどん強くなった。得意のピアノを生かし、核兵器廃絶を願う「Colorful World」を洋上で作詞作曲した。

 大学卒業後は、結婚式をプロデュースする東京の会社に2年間勤めた。広島に戻りたい気持ちはずっとあった。広島で知人がカフェを開くのを知り、昨年7月からスタッフになった。船旅で感じたことや日常の幸せなどをテーマに、カフェや地域行事で歌声を披露している。

 核兵器の問題だけではない。貧困や戦争など世界にはさまざまな問題があふれている。みんなが「世界のつくり手」になるために、自分ができることから始めてほしい。家族や友だちと仲良くするなど、自分の周りから平和の輪を広げるイメージ。多くの人の心に響く歌を届けたい。(聞き手は増田咲子)

せと・まゆ
 1991年、呉市生まれ。早稲田大国際教養学部卒。非政府組織(NGO)ピースボートの船旅で世界を3周。2013年の航海では、外務省委嘱のユース非核特使も務めた。広島市中区のカフェ「ハチドリ舎」スタッフ。

(2018年10月22日朝刊掲載)

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