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原爆の悲哀や怒り 短歌に 廿日市の田中さん 歌集を自費出版

 「共に死ぬ事を名誉と思いてし生き残りたる悔いは胸にあり」。廿日市市地御前の被爆者、田中祐子(さちこ)さん(89)が、原爆を短歌に詠み続けている。この2年に作った30首を、自費出版した歌集に収録した。

 田中さんは爆心地から1.8キロの自宅で被爆。倒壊した家屋の下敷きとなって助け出されたが、いとこや学徒動員された友人たちを失った。原爆への怒り、そして悲哀を三十一文字に込め、等身大に表現する。

 「百万遍語れど原爆の惨状は伝えられなきものと思えり」。70年以上たち、原爆の悲惨さが理解されないもどかしさを詠んだ。

 「被爆者をハグしてオバマ大統領ヒロシマに来られしただ嬉しかり」。2016年の米大統領広島訪問をテレビで見つめて自分も抱かれ、気持ちが通じたように感じたという。

 「核兵器禁止条約成立すと爆死せる人等に報告出来ぬ」。被爆国なのに禁止条約に背を向ける日本政府への憤りを歌にした。

 2冊目となる田中さんの歌集は「生きる(二)」と題し、約400首を収録。今年1月に手術を受けた乳がんに向き合う姿なども加え、200部を発行した。「一番読んでもらいたいのが原爆の短歌。忘れられないよう、今後も歌にして後世に残したい」と意気込む。(山本祐司)

(2018年10月29日朝刊掲載)

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