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社説・コラム

天風録 『米軍機墜落、47年前の恐怖』

 急いで本紙の黄ばんだ切り抜きを探してみた。「これが水爆だ/スペイン沖で墜落の米機積載」と見出しにある。1971年、広島県被爆教師の会が米国の平和団体から入手したスライドの1こまに、物騒な「落とし物」があった▲その5年前、アンダルシア州の小さな村の上空で米軍のB52爆撃機と空中給油機が接触し、ともに墜落した。爆撃機は水爆4個を積み、うち1個が地中海に没してしまう。回収されたのは80日後で、その間、住民は心の休まることがなかったという▲きのう朝、高知沖でFA18戦闘攻撃機と空中給油機が接触して墜落した。米軍岩国基地所属で、捜索・救助が続いている▲拙宅では家人が「なんで飛びながら給油せんといけんの」といぶかっていた。もっともな疑問である。いわば「空のタンクローリー」は、冷戦下に米国本土からソ連を爆撃する必要に迫られたがゆえの産物らしい。そんな物騒な時代とは、おさらばしたはずだが、何のため岩国に▲スライドに映る、海に落ちた水爆は衝撃でへこんでいた。このたびのFA18が危うい落とし物をしたとの情報は聞かないが、しばらく飛行を自粛してくれなければ、私たちの心も休まらない。

(2018年12月7日朝刊掲載)

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