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社説・コラム

社説 岩国の米軍2機墜落 飛行停止を強く求める

 米軍機の墜落事故が後を絶たない。米軍岩国基地(岩国市)所属のFA18戦闘攻撃機とKC130空中給油機がきのう未明、高知県・室戸岬の沖合で墜落した。日本周辺では今年に入って3件目となる。岩国基地所属のFA18は11月に沖縄本島の沖合で墜落したばかりだった。

 基地周辺で事故の危険と隣り合わせで暮らしている住民の不安は、いかばかりか。岩国市の福田良彦市長は、原因が明らかになるまで航空機の運用を見合わせるよう在日米軍に申し入れたという。当然のことだ。

 政府も情報提供や安全管理の徹底、再発防止を米軍に申し入れたようだが、それで済ませてはなるまい。原因究明と安全確認ができるまで、米軍機の飛行停止を求めるべきだ。

 防衛省によると、墜落した2機には合わせて7人が搭乗していた。2人が救助されたが、残る5人の行方が分かっていない。自衛隊などが捜索を続けている。まずは救助に全力で当たってほしい。

 米軍からは訓練中に接触した可能性が高いとの説明があったものの、詳細は何ら明らかにされていない。事故の状況などから、難易度の高い深夜の給油訓練をしていたとみられる。

 空中給油機は4年前、沖縄県の基地負担軽減を理由に米軍普天間飛行場(宜野湾市)の所属部隊が岩国基地へ移駐してきた。戦闘機の飛行中に燃料を補給する「空のガソリンスタンド」と呼ばれる。戦闘機の行動範囲が飛躍的に広がる。その分、岩国基地は有事の出撃拠点としての重みを増してきた。

 さまざまな航空機に給油する任務のため、訓練は多様化し、中四国、九州地方を中心に広域化したとされる。だが詳しい運用について、地元を含め日本側にはほとんど示されていない。

 墜落事故が起きた6日午前2時前は、岩国基地の滑走路は通常運用をやめている時間帯だった。市には時間外使用の事前連絡はあったが、具体的な日時や軍用機の種類などは知らされていなかった。いつ、どこで、どんな訓練が行われるのか、墜落の恐れのある自治体には可能な限り説明すべきではないか。

 というのも空中給油訓練を巡るトラブルは多い。一昨年末には普天間飛行場所属の輸送機オスプレイが夜間の空中給油訓練中に、沖縄県名護市の浅瀬に不時着して大破した。岩国基地所属の空母艦載機も今年5月、訓練中にトラブルを起こした。

 通常の飛行訓練に比べて高度な技術を要し、事故のリスクが高まるのは明らかだ。にもかかわらず、今のままでは運用をチェックする手だてがない。

 墜落現場は実弾射撃などをする訓練海域ではないが、通常の飛行訓練を行うのは問題ない。ただ高知県室戸市役所は「米軍機が室戸沖を通過しているのも知らなかった」と戸惑う。一帯はカツオやマグロなどの漁場で、事故当時も操業していた漁船がいた。事故に巻き込まれていた可能性は否定できない。

 日本の空や海で訓練している以上、米軍は情報を最大限公開する道義的な責任はあるはずだ。日本政府も強く促し、情報提供や説明責任を果たしていかなければならない。

 事故はどこでも起き得る。そのリスクを前提にしなければ、国民の不安は拭い去れない。

(2018年12月7日朝刊掲載)

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