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竹島式典に政務官出席 島根県松江 初の政府関係者

 日韓両国が領有権を主張する島根県の竹島(韓国名・独島(トクト))をめぐり、県は条例で「竹島の日」と定める22日、記念式典を松江市で開いた。領土問題への関心が高まった昨年8月の韓国・李明博(イミョンバク)大統領の上陸以来、初の式典。島尻安伊子内閣府政務官が政務三役として初めて出席した。

韓国側は抗議声明

 県は2006年の初開催以来、一貫して外交交渉を担う政府関係者の出席を求めていた。首相を初めて招待したが、安倍晋三首相の出席は見送られた。

 式典には島尻政務官をはじめ、過去最多となる国会議員20人が参加した。内訳は自民党13、民主党2、日本維新の会2、みんなの党2、みどりの風1人。一般市民も含む参加総数は517人。

 主催者を代表し、溝口善兵衛知事が島尻政務官に領土権確立に向けた要望書を提出。国際司法裁判所への提訴など外交交渉の進展や隠岐の島町への啓発施設の建設、竹島の日の閣議決定など6項目を求めた。

 式典後、溝口知事は「これまでなかった政府の対応が進んでいる」と評価。「問題解決に向け、日韓両国のトップが率直な意見交換ができる関係を構築してほしい」と述べた。

 竹島をめぐっては政府が1905年に島根県への編入を閣議決定し、県が2月22日に告示した。編入から100年を迎えた2005年に県が2月22日を「竹島の日」とする条例を制定し、06年から毎年式典を開いている。今回が8回目。

竹島式典で島尻政務官「粘り強く歩み進める」

 「竹島の日」の22日に松江市内で開いた8回目の記念式典に政務三役として初めて出席した島尻安伊子内閣府政務官は、あいさつで「竹島は言うまでもなく日本の領土で、国の主権に関わる重要な問題だ」と強調した。

 安倍政権が領土問題を担当する大臣や部署を新たに設置したことに触れ、「国民全体で力を合わせて対処する必要がある課題だ。粘り強く歩みを進めていく」と述べた。

 一方で「韓国は基本的な価値、東アジア地域の平和と繁栄などの利益を共有する隣国でもある」と指摘。平和的な問題解決に加え、「未来志向の考えの下、経済や安全保障などで重層的な日韓関係を構築する必要がある」とした。

 式典終了後、報道陣の取材に応じ、韓国政府が式典への出席に反発していることについて「日本政府としての判断であり、どうこう言われるものではないと認識している」と述べた。(明知隼二)

式典 評価と反発に会場緊張

 島根県が条例で定める「竹島の日」の22日に松江市で開いた8回目の記念式典には、外交交渉に携わる政務三役が初めて出席した。県関係者や実害を被る漁業者は「一歩前進」と評価する一方、韓国側は反発を強めた。領有権をめぐり、日韓両国の主張が真っ二つに割れる問題の難しさをあらためて浮き彫りにした。(樋口浩二、松島岳人、川上裕)

 「県の地道な努力が政府に届いた」。超党派の島根県議でつくる竹島領土権確立議員連盟(35人)の原成充会長(67)は、政府三役の出席に笑顔を見せた。条例を発案した同議連として「全国、世界へのアピールを続ける」と意気込んだ。

 「何もしてこなかった政府が動いたことに意味がある」。韓国による実効支配の影響で日本海上のズワイガニ漁などを制限されているJFしまね(松江市)の岸宏会長(69)も歓迎した。その上で「漁業者の救済を進めてほしい」と求めた。

 竹島が「町有地」となる隠岐の島町からは依然、厳しい声も。「国会議員の発言は威勢はいいが成果はこれから。隠岐の声に応える仕事を」。父と兄、叔父が1954年まで竹島周辺で漁をした同町の漁業八幡昭三(しょうざ)さん(84)は式典後に話した。

 一方、韓国からは式典に反対する市民団体が駆け付けた。県警が500人態勢で警備に当たる中、会場前で横断幕と韓国国旗を掲げて抗議する団体や、ビラを配ろうと会場入りを試み制止される男性もいた。

 韓国の報道機関は過去最多の9社が式典取材に訪れた。あるテレビクルーの一人は「取材の趣旨は明かせない」とした。

 松江市の会社員加藤泉さん(33)は「話し合いで平和に解決できるように、国や県、民間が一緒に知恵を出し合うことが大事だと思う」と話していた。

(2013年2月23日朝刊掲載)

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