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「飛行停止」県・市に差 米軍機事故

岩国市長は要求「見過ごせない」 山口知事求めず「事故防止重要」

 高知県沖で米軍岩国基地(岩国市)の海兵隊所属KC130空中給油機とFA18戦闘攻撃機が訓練中に墜落した事故で、岩国市の福田良彦市長は6日、事故原因が明らかになるまで同型機の飛行停止を基地司令官に求めた。山口県の村岡嗣政知事も米側に原因究明などを要請。ただ、11月に同基地の戦闘機が沖縄沖で墜落した時と同様に飛行停止までを求める考えはないとした。(松本恭治、門脇正樹)

 福田市長は報道陣の取材に「米軍機の事故が相次ぎ不安や懸念が増大している。見過ごすことができない」と強調。同日午前に同基地のリチャード・ファースト司令官に電話で原因判明まで米軍機の運用の見合わせを求めたことを明らかにした。司令官から具体的回答はなかったという。

 福田市長は、この日の市議会本会議の冒頭で事故状況や市の対応を報告。「引き続き事故に関する情報収集に努めるとともに山口県や周辺市町と連携して原因究明や再発防止の徹底を国や米軍に厳しく求めたい」と述べた。

 村岡知事は同日、報道陣に「重大な事故が続き大変遺憾に思う」と述べ、中国四国防衛局と米側に事故の原因究明と再発防止の徹底を要請したことを説明。一方、同型機の飛行停止を要請するかどうかについては「まずは『こんな事故を起こしてくれるな』と厳しく求めていく」と踏み込まなかった。

 この日の県議会一般質問では飛行停止を要請しない知事の姿勢を野党県議2人が批判。「県民の安全を守る最高責任者として飛行停止を求めた上で原因究明と再発防止を要請すべきだ」との指摘に対し、村岡知事は「一番重要なのはこうした事故を起こさないことだ」と繰り返した。

「早期の原因究明を」 周辺自治体 不安の声強く

 高知県沖で米軍岩国基地のKC130空中給油機とFA18戦闘攻撃機が訓練中に墜落した事故で、基地に近い自治体や、米軍機の訓練空域がある中国地方の自治体から不安の声が上がった。相次ぐ米軍機の事故やトラブルに、早期の原因究明や同型機の飛行中止を求める意見も相次いだ。

 「町民も不安や危険を感じている」。岩国基地から南に約20キロにある山口県周防大島町の椎木巧町長は語気を強めた。「島の上空は過酷な訓練をする場ではないと思うが、県や関係市町の協議会を通じて再発防止を求める」

 岩国市と隣接する柳井市の井原健太郎市長も「基地の周辺地域全体の問題。県や岩国市と連携して対応する」。和木町の米本正明町長は「町民の不安は増大した。原因究明と再発防止を強く求めたい」とコメントした。

 隣県にも不安は広がった。広島県の湯崎英彦知事はこの日、県庁で西日本豪雨の支援について中国四国防衛局(広島市中区)の赤瀬正洋局長に感謝状を手渡した後、申し入れた。「短期間に次々と重大事故が起こり、誠に遺憾。これまでも十分な原因究明がされず、詳しい説明もないまま訓練が継続される状況は看過できない」

 広島県とともに米軍の訓練空域が広がる島根県の溝口善兵衛知事は、この日の定例記者会見で「速やかな原因究明、再発防止策を中国四国防衛局に求めた」と述べた。

 廿日市市の真野勝弘市長は「原因が分かるまで同型機の飛行を中止してもらいたい」と訴えた。岩国市と隣接する大竹市の入山欣郎市長は「安全管理に万全を期す運用をしていただきたい」とコメントした。

 広島市平和推進課の松嶋博孝課長は「事故は、基地の近隣住民に大きな不安や懸念を抱かせる。市民の安心安全を守るため、県などと連携して適切な対応を日米両政府に求める」と語った。

菅氏「米と連携」

 高知県の室戸岬沖の太平洋上で米軍岩国基地所属の空中給油機と戦闘攻撃機が接触して墜落した事故について、菅義偉官房長官は6日の記者会見で「防衛省から米側に情報提供するよう申し入れ、関係自治体に情報を提供した。米側と連携して適切に対応したい」と述べた。

 防衛省は6日、空中給油機5人、戦闘攻撃機2人の搭乗者計7人のうち、夕方時点で2人を救助し、5人が不明と発表した。菅氏は会見で「日米で協力し、捜索、救助に全力を尽くしたい」との考えを示した。

 岩国基地所属の米軍機は11月12日にも那覇市沖の海上に墜落している。防衛省の河野克俊統合幕僚長は6日の会見で事故の続発について聞かれ、「事故原因を米軍が調査する。その結果を待ちたい」と話すにとどめた。

(2018年12月7日朝刊掲載)

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