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被爆前の街を携帯端末に再現へ 広島の専門家が構想

■記者 森田裕美、水川恭輔

 ワンセグ放送が受信できる携帯端末を持って平和記念公園(広島市中区)を歩けば、原爆で壊滅する前のその場所の街並みを画面上に再現できる-。広島の映像、建築工学などの専門家でつくる「平和公園復元映画製作委員会」がこんなシステムの実用化を目指し、構想を練っている。

 製作委は、現在は公園となった旧中島地区の被爆前の街並みをコンピューターグラフィックス(CG)で復元し、映画化を進めている。同時に、映画完成後はCG画像を広く市民に活用してもらう手法も検討している。  広島市立大(安佐南区)であった6日の会合では、中嶋健明・市立大教授たちが、小型のワンセグ送信機を使って、CG画像を携帯電話やパソコンの画面に映し出せることを確認した。

 衛星利用測位システム(GPS)を用いて、利用者が歩きながらその場所に応じた復元画像を受信することも将来的には可能という。実用化へは送信機などの設備を公園内に設置する必要があり、管理する市の協力も必要となる。

 繁華街だった旧中島地区のCG画像による復元や元住民の証言収録は順調に進んでいる。映画化では、来年4-5月に米ニューヨークの国連本部である核拡散防止条約(NPT)再検討会議での上映を目標にしている。

 6日は旅館や銭湯など一軒一軒を内部まで再現した画像も披露された。映画を監督する映像制作会社社長田辺雅章さん(71)は「映画完成後は画像を市民に活用してもらい、原爆で失ったものの大きさを実感してほしい」と希望している。

(2009年3月7日朝刊掲載)

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