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社説・コラム

天風録 『火を紙でくるむ』

 護衛艦とはいっても、かつての戦艦大和に迫るサイズという。海上自衛隊の「いずも」である。戦闘機も離着艦できる、事実上の空母にする構想が、新たな「防衛計画の大綱」に記される▲与党は、空母には当たらないと言い張るつもりらしい。「多用途運用護衛艦」とも呼ぶそうだ。何やら煙幕を張られたような気がしてくる。なぜならば、安倍晋三政権の専売特許ともいえるのが言い換えだからである▲消費増税の再延期を公約違反ではなく「新しい判断」とし、南スーダンでの戦闘は「武力衝突」だったと突っぱねた。改正入管難民法でも移民政策ではなく「外国人材」と言い繕った。賭博場のカジノを解禁する「統合型リゾート」といい、枚挙にいとまがない▲日米間の自由貿易協定(FTA)に代えて持ち出した物品貿易協定(TAG)には、米国側が「完全なFTAだ」との態度を崩していない。さて、「いずも」では外向けに、一体どんな訳語を用意しているのだろうか。ぜひとも聞いてみたいものだ▲物は言いようとはいえ、程があるということだろう。紙で火をくるむことはできない。言葉の化粧紙で覆い隠そうとも、正体は火を見るより明らかである。

(2018年12月17日朝刊掲載)

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