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本川橋 1931年の油絵寄贈 県立美術館に兵庫の男性

 爆心地から410メートルの本川橋(広島市中区)かいわいを昭和初期の1931年に描いた油絵が、県立美術館(中区)に寄贈されることになった。同美術館は「戦前の広島の活気ある風景を描いた絵画は貴重」と評価する。(藤村潤平)

 絵は縦33センチ、横45センチ。現在の平和記念公園(中区)がある中島地区側から、本川対岸にあった赤れんがの芸備銀行(現広島銀行)塚本町支店や雁木(がんぎ)付近に係留された舟を描く。作者は野田信(まこと)。同美術館によると広島で活動し、日展の前身である帝展への入選記録はあるが、生没年などは分かっていない。

 寄贈するのは、兵庫県川西市の山崎恭弘さん(80)。父親が野田と中学の同級生だった縁で、実家があった塚本町(現在の中区土橋町、堺町1丁目)かいわいの絵を描いてもらったという。

 鉄製トラス橋の本川橋は1945年8月6日、米国による原爆投下の爆風で橋桁がずれ、翌9月の枕崎台風で落ちた。49年に架け直された。芸備銀行塚本町支店は原爆で全壊した。山崎さんは、壊滅した古里の思い出の品として絵を保管してきたが、「懐かしい風景を多くの人に見てほしい」と寄贈を決めた。

 同美術館の藤崎綾学芸員は「原爆投下で、当時の画家は名前が分かっても作品が残っていない場合が多い。戦前の広島の洋画界を明らかにしていく手掛かりにもなる」と話している。

(2013年2月26日朝刊掲載)

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