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連載・特集

2018年 中国地方この1年 艦載機移転・地上イージス計画

軍事拠点化 地元に不安

 激しい爆音とともにジェット戦闘機の編隊が上空に次々と姿を現し、滑走路に降り立った。11月29日、米軍岩国基地(岩国市)。空母ロナルド・レーガンの洋上展開に同行し岩国を離れていた海軍の空母艦載機が約3カ月ぶりに帰還した。当面、来春まで岩国を拠点に離着陸を繰り返すとみられる。

 岩国基地は3月30日、厚木基地(神奈川県)からの空母艦載機約60機の移転が完了。所属機は既存の海兵隊機を含め約120機に倍増した。日米両政府が在日米軍再編のロードマップに合意し12年。賛否を巡って民意を二分する曲折を経て、極東最大級の航空基地へ変貌を遂げた。

激増する騒音

 移転完了の影響は如実に表れた。岩国市が岩国基地周辺で測定する航空機騒音の回数は4、5月の2カ月連続で、2010年の滑走路沖合移設後の月別最多を更新した。「ここまでうるさいとは」「何とかして」。多くの市民が連日の爆音に悩まされた。騒音測定回数の激増に伴い、市への苦情件数も2カ月続け月別最多となった。

 基地所属機の事故やトラブルも相次いだ。11月12日午前、日米共同訓練中のロナルド・レーガンを発艦したFA18スーパーホーネット戦闘攻撃機がエンジントラブルで那覇市沖に墜落。米海軍安全センターなどによると今年、同型機が国内外で起こした最も重大な「クラスA」事故で5件目となった。

 それから1カ月もたたない今月6日未明には海兵隊のKC130空中給油機とFA18ホーネット戦闘攻撃機が高知県沖で接触、墜落。空中給油を含む夜間訓練中に乗員6人が死亡する大惨事となった。KC130は14年、沖縄の負担軽減策で米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)から計15機が岩国へ移転。その計画は艦載機と同様に米軍再編のロードマップに盛り込まれていた。

 「市街地で落ちたらもっと大変なことになる」。相次ぐ事故に、基地と隣り合わせで暮らす住民に危機感が募った。福田良彦市長は2機墜落の当日、原因判明まで米軍機の運用を見合わせるよう基地司令官に要請。市や山口県などでつくる県基地関係県市町連絡協議会は17日、抜本的な安全対策の確立を基地などに申し入れた。

 日本海に面した山口県北部では政府が昨年導入を決めた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画が一気に動きだした。北朝鮮への弾道ミサイル防衛(BMD)の一環として防衛省は6月1日、陸上自衛隊むつみ演習場(萩市)を「最適候補地」として正式に公表し、県や地元自治体に伝えた。

 その直後の6月12日、米朝首脳が初めてシンガポールで会談。融和ムードが漂う中、国はなおも配備の必要性を強調する。一方、昨年来繰り返していた北朝鮮のミサイルを想定した住民の避難訓練は中止を決め、広島県などに展開する地対空誘導弾パトリオット(PAC3)部隊も撤収した。ちぐはぐな対応にイージス計画の地元では住民から疑問と反発の声が相次ぐ。

結論は越年へ

 「町民の安全安心を著しく損なう」。9月20日、演習場に隣接する山口県阿武町の花田憲彦町長は配備計画の反対を表明。高まる町民の不安を代弁。一方、萩市の藤道健二市長と村岡嗣政知事は計画への是非をいまも明らかにしていない。

 防衛省は現在、最終的な配備先決定に向けた現地調査を進める。日米同盟の強化を象徴する最新鋭の防衛装備の配備に地元の理解は得られるのか。結論は新たな年へと持ち越される。(松本恭治、和多正憲)

(2018年12月20日朝刊掲載)

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