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[回顧やまぐち2018] 地上イージス 「配備ありき」住民反発

「脅威」強調 国は着々準備

 「ふるさとを守ろう」と書かれたむしろ旗が寒風に揺れる中、200人を超える市民が「イージス反対」と声を張り上げた。11月23日、萩市の城下町は熱気に包まれた。

 ここから約30キロ離れた市周辺部の旧むつみ村(現萩市)で、北朝鮮の弾道ミサイルを撃ち落とすための最新鋭の防衛装備の建設が計画されている。この日のパレードは市中心部の人たちにも関心を持ってほしいと地元住民が初めて企画した。

 「イージス・アショア(陸上の盾)」。国はそう称する迎撃システムの配備について陸上自衛隊むつみ演習場(萩市)と陸自新屋演習場(秋田市)の国内2カ所が「最適」とする。6月1日に山口、秋田の両県知事と地元首長に候補地とすることを正式に伝えた。

相次いで説明会

 その後の展開は急速に進む。国は候補地の公表から約3週間で防衛相の地元入りや住民説明会を立て続けに実施。自治体側が急きょ防災無線や広報車で開催を周知して回った。

 「なぜ、むつみなのか」「ミサイルの標的になる」。6月17~19日、萩市や隣接する阿武町であった初の住民説明会。住民からは不満と懸念が噴出した。とりわけ演習場周辺は田園地帯のため、レーダーが発する強力な電磁波による人体や農作物への影響を懸念する声が目立った。

 これに対し、国は一貫して配備の安全性と必要性を強調。6月12日の初の米朝首脳会談後の半島情勢についても「北朝鮮の脅威は変わらない」として早急な導入方針を示す。

 高まる住民不安。最初に動いたのは阿武町だった。9月20日、花田憲彦町長は町議会定例会で「町民の安全安心を著しく損なう」と訴え、地元自治体トップで初めて反対を表明。町議会も計画撤回を求める請願書を全会一致で採択した。

 一方、萩市の藤道健二市長は「現時点で判断しない」と計画の是非について言及しない。村岡嗣政知事も「地元の理解が得られるよう丁寧な説明を」と国に求めながらも自らの態度は明らかにしていない。

関連予算を計上

 国は本年度末までに最終的な配備先決定に向けた現地調査を終えた上で「仮に不適との結論なら見直す」とする。ただ、すでに来年度当初予算案には取得費など巨額の関連予算を計上。導入準備を着々と進める。

 「結局、むつみありき。配備のスケジュールありきだ」。11月の萩市民パレードを企画した住民の会の森上雅昭代表は批判。「地元だけでなく、県全体で考えるべき問題。反対署名も続けて世論に訴えたい」と語気を強める。(和多正憲)

(2018年12月28日朝刊掲載)

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