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デビュー当初 故中沢さん原画 元同僚・広島市安芸区の東さん保管 

 昨年12月に73歳で亡くなった漫画家中沢啓治さん(広島市中区出身)が半世紀前のデビュー当初に描いた原画1枚を、広島市安芸区の東武士さん(79)が保管している。東さんは、中沢さんが漫画家を志して上京する前に働いていた看板業者の同僚。「プロになった記念に」と贈られた原画は二人の友情の証しだ。(田中美千子)

 A4判の原画はプロ野球の試合の一こま。阪神のユニホームを着た投手の投球シーンと、その後方で構える内野手の2人が描かれている。左下に中沢さんのサインがある。

 中沢さんから代表作「はだしのゲン」などの原画約9500枚を寄贈された原爆資料館(中区)は「アシスタント時代に手掛けた児童漫画の作風をうかがわせ、貴重だ」とする。

 中沢さんは1961年に上京する直前まで、市内の看板業者に勤めた。年上の東さんは中沢さんとペアを組み、現場までの車の運転や足場の組み立てなどを担当していた。

 絵を贈られたのは、中沢さんがデビュー後の65年ごろ。帰省した中沢さんから「投手のモデルは東さん、内野手は自分」と手渡された。野球好きの二人は職場で草野球チームを結成するほどの仲。東さんはその後、建設業を営んだ。中沢さんが活躍するようになっても、互いに行き来したという。

 東さんは「中沢は苦労して漫画家になり、原爆の恐ろしさを世界に発信した。この原画は自慢の友の形見だ」と話している。

(2013年2月28日朝刊掲載)

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