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組織標本使い共同研究 へ 放影研

■記者 森田裕美

 放射線影響研究所(広島市南区、放影研)は、被爆地の医療機関が長年、外科手術や検査を通じて保管してきた被爆者の組織標本を、研究に生かすネットワークづくりに着手する。放射線被曝(ひばく)が人体に及ぼす影響を解明するのが目的。4日、専門評議員会の閉会後の記者会見で大久保利晃理事長が明らかにした。

 医療機関との協力体制を確立し、急速に進歩する分子レベルの解析技術などを用いて、被曝による疾病発症のメカニズムを解明する共同研究につなげる。

 放影研によると、広島の医療機関には、1950年代からがん手術や検査などの際に本人や家族の了解を得て入手した病巣や組織標本がある。一方で、各医療機関とも保管スペースには限りがあることから、廃棄や散逸を懸念する声がある。

 このため放影研は新年度、広島、長崎両市の計6病院に保存を依頼。保管状況や標本数などを確認し、具体的な研究計画を立てる。

 専門評議員会共同座長の徳永勝士・東京大大学院教授は「研究の有効な推進のためには、最先端のゲノム解析技術の利用や部局を超えた協力体制が必要」と提言した。

 また、新年度再開する被爆二世の健康影響調査について放影研は、約1万4000人を対象に、4年に1度の健診を期限を決めず、繰り返し続ける方針も報告した。

(2009年3月5日朝刊掲載)

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