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低空訓練 脅威の空 オスプレイ 岩国基地拠点 準母基地化 懸念も 

 山口県岩国市の米海兵隊岩国基地を拠点に行われることが28日明らかになった垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの本土訓練。事故が相次いだ新型輸送機の再来に、岩国基地周辺の住民らからは不安や警戒の声が上がり、岩国市や山口県は情報の確認作業に追われた。

 米軍の公表した環境審査報告書には、岩国基地で毎月2、3日、一度につき42回、年間約500回運用―とある。中国山地を横断する米軍の飛行経路「ブラウンルート」や西中国山地の訓練空域「エリア567」などでの低空飛行訓練の可能性が指摘されている。

 山口、広島両県の住民でつくる「瀬戸内の静かな環境を守る住民ネットワーク」の顧問の久米慶典さん(56)=岩国市=は「訓練空域だけでなく、どこを飛ぶか分からない。岩国基地がオスプレイの準母基地として位置付けられているのではないか」と懸念した。

 岩国基地内では昨年末、岩国錦帯橋空港が開港。民間機も就航した。基地監視団体リムピース共同代表の田村順玄岩国市議(67)は「民間機に支障があってはならない。訓練の実態を厳しく監視する」と警戒を強めた。

 同日夕に中国四国防衛局から連絡を受けた山口県では、基地の訓練期間などを把握。山本繁太郎知事が「県民の不安が解消できるよう情報収集に努める。(米軍側には)運営に関する日米合同委員会の合意をしっかり順守してもらいたい」とのコメントを出した。

 岩国市の福田良彦市長も「飛行の状況を注視し、問題のある飛行があった場合には適切に対処する」とした。

 広島県の湯崎英彦知事は「県民が納得できる説明がないまま訓練されることは誠に遺憾」とした。岩国市に隣接する大竹市の入山欣郎市長は「住民の安心、安全の確保について十分配慮するよう国に要望する」との談話を発表した。

 米軍機の低空飛行訓練に悩まされている三次市作木町の町自治連合会の田村真司会長(62)は「小学校の上空を飛ぶこともある。人命をどう考えているのか」。住民団体「岩国基地の拡張・強化に反対する広島県西部住民の会」の坂本千尋事務局長(59)は「県民の生活がいよいよ不安にさらされる。日本政府はなぜ許したのか」と不信感を募らせた。

(2013年3月1日朝刊掲載)

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