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事務局や通訳 参画者聞き取り 初期の原水禁運動 集成 

 1954年3月1日のビキニ水爆実験を機に巻き起こった原水爆禁止運動で、60年までの初期の運動を中心的に担った関係者への聞き取りをまとめた記録集成=写真=が完成し、広島市公文書館(中区)などで閲覧が可能になった。

 当時の原水禁世界大会の事務局や通訳などに参画した12人の語りや座談会を収録したA4判、529ページ。61年の旧ソ連の核実験再開に対する評価をめぐり、運動が分裂する以前の「草の根運動」の息吹を伝える。

 東京在住の研究者たちがプロジェクトチームをつくり、2007年から09年にかけて聞き取った。広島の被爆者で大学生の時に大会通訳を務めた森百合子さん(77)=東京都杉並区=は、3週間の事前特訓や仲間と育んだ友情を振り返り「猛暑の中でも無我夢中になれるやりがいがあった」と証言。後にプロの通訳になる原点になったという。

 社団法人のピープルズ・プラン研究所(東京)が発行し、昨年末から主に研究機関に提供。経費の一部を広島市立大広島平和研究所が助成し、同市公文書館にも献本された。

 プロジェクトの一員である東京経済大の藤原修教授(平和学)は「今も官邸前などで続く脱原発デモのうねりは、政党や労組主導でない点で初期原水禁運動に近い。今こそ注目したい歴史」と話している。(道面雅量)

(2013年3月2日朝刊掲載)

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