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新作のバラ「ICAN」 被爆者で育種家 田頭さん 核廃絶運動に共感

各加盟団体も「大感激」

 広島県廿日市市友田の被爆者でバラ育種家の田頭数蔵さん(89)が、新作のバラを「ICAN」(アイキャン)と名付けた。2017年にノーベル平和賞を受けた非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)の活動に心動かされ、先方の快諾を得た。(金崎由美)

 淡いピンクの花びらと、ふんわりした樹形。仲間と共感し合うように次々と房咲きするのが特徴だ。「広島だけでなく世界中の戦争体験を持たない若者が被爆者と同じ思いで核兵器をなくそうとしていることがありがたい。その気持ちを表した」と田頭さんは語る。

 1945年8月6日夕に広島市内に入り、爆心直下の相生橋を通って上天満町(現西区)にあった自宅へ戻った。折り重なる死体。助けを請う負傷者。学徒動員で小網町(現中区)付近にいた弟は被爆死した。

 被爆前、近所のおじいさんが育てるバラの美しさに魅了された。戦後、そのおじいさんから被爆したバラの枝の挿し木をもらい、庭に植える。独学で栽培法を模索して25歳でバラ園を開業。被爆者治療とともにバラを通した平和交流に尽くした故原田東岷さん(1999年死去)を支え、「ヒロシマアピール」などの品種を世に出してきた。

 被爆者の妻鈴子さん(83)と切り盛りしてきた「広島バラ園」の経営は長男恵さん(54)に譲ったが、「焼け跡に平和の花を咲かせ、犠牲者の慰霊を」という原点の誓いは変わらない。

 田頭さんの命名の希望に対して、スイスに事務局があるICANは歓迎。今月22日、世界各地の国際運営団体を集めた電話会議でも報告され、「被爆者としての思いの深さに全員で大感激した」といい、このバラの絵はがき作成などのアイデアも出たという。

 国際運営団体の一つで日本のNGO、ピースボートの川崎哲共同代表は「ありがたく受け止めている。ICANのバラを通して核兵器廃絶の訴えを強めたい」と話している。

(2019年1月28日朝刊掲載)

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