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社説・コラム

社説 沖縄県民投票告示 基地負担を直視しよう

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設に伴う名護市辺野古での新基地建設を巡る県民投票がきょう告示される。

 辺野古沿岸部の埋め立ての是非を「賛成」「反対」「どちらでもない」の3択で問うもので、24日に投開票される。

 沖縄県民は、日常生活のさまざまな場面で米軍基地の影響を受けている。それだけに新基地建設に賛否の意思を明らかにするのは当然のことで、その意義は重い。「沖縄のことは自分たちで決める」という自己決定権の行方を、全ての国民が注視する責任があるはずだ。

 県民投票は、新基地建設に反対する市民グループが署名を集めて県議会に直接請求し、昨年10月に実施が決まった。当初は、辺野古沿岸部の埋め立てに「賛成」「反対」の二者択一で計画された。

 だが2択では普天間飛行場返還などを絡めた多様な意見が反映されないなどとして、宜野湾市や沖縄市など5市が不参加を表明した。このため「どちらでもない」を加えた3択に増やした結果、5市も方針転換し、参加することになった。

 「どちらでもない」の受け取り方次第で投票結果の評価が曖昧になる懸念は残る。それでも3割もの有権者が投票できない事態を回避できた意味は大きい。県内全41市町村がそろって実施されることを、率直に評価したい。

 県民にはいま一度、新基地の必要性や沖縄の将来について考え、建設的な議論を深めてほしい。一人でも多くの有権者が投票所に足を運び、高い投票率で民意を示すことが大切になる。

 県民投票では、最も得票の多い選択肢が有権者総数の4分の1に達したとき、知事は結果を尊重しなければならないとし、首相と米大統領に通知すると定められている。

 法的拘束力こそないものの、その結果を政府がどう受け止めるのかが最大の焦点になる。

 新基地建設に反対する県民の意思は、これまで繰り返し示されている。2014年の知事選では、反対を掲げた翁長雄志(おなが・たけし)氏が当選した。同氏の死去に伴う昨年9月の前回知事選でも、同じく反対を主張した玉城デニー氏が圧勝したことから大勢は明らかだろう。

 ではなぜ、県民投票をまた行う必要があるのか。度重なる選挙で示された民意を受け止めようとせず、政府が建設工事を強行しているからだ。昨年末から土砂投入を開始し、県民投票まで1カ月に迫った時点で新たな護岸の工事にも着手した。

 既成事実を積み重ねることによって、県民に諦めムードを広げる狙いも透けてくる。少なくとも県民投票が終わるまでは工事を中断すべきではないか。問われるべきは、「辺野古が唯一の解決策」と繰り返すだけの安倍政権の姿勢である。

 安全保障は国全体の問題といいながら、なぜ沖縄だけが過重な基地負担を強いられているのか―。県民投票には全国民に対する切実な問い掛けも込められているはずである。

 基地負担の現実を直視するとともに、沖縄への押し付けを容認してきた責任を自覚しなければならない。辺野古でなければならない理由について、私たちも改めて一緒に考える機会にすべきだろう。

(2019年2月14日朝刊掲載)

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