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社説・コラム

天風録 『「最も美しい手紙」』

 おやおや、もうエープリルフールですかと思わせる外報だった。米国のトランプ大統領が、ノーベル平和賞に推されたと自ら明かしたそうだ。推薦書簡を出したのは安倍晋三首相で、おまけに「日本を代表して」のものという▲やぶから棒ではないか。首相がもし本心から受賞者にふさわしいと考えているなら、失礼ながら判断力を疑われても仕方あるまい。「自国第一主義」で国際社会をぐらつかせている張本人である。女性差別などの発言で米国社会の亀裂も広げてきた▲大統領によると、米朝交渉などで日本上空を北朝鮮のミサイルが飛来する懸念が消え去り、安心感を得たのが推薦理由らしい。それならば、2基で2千数百億円もする地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」を売り付けるのも、日本が買うのもおかしい▲逆に大統領の早とちりか何かだとなれば、気分屋さんのご機嫌を損ないかねない。さてうそか、まことか。きょうの衆院予算委員会でただしてもらいたい▲お世辞も同然の書簡の写しを大統領は「最も美しい手紙」と呼ぶ。「美しい国」をめざす首相と美意識もおそろいのようだが、どちらの国民も置いてけぼりというのが空恐ろしい。

(2019年2月18日朝刊掲載)

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