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「平和の丘」1期工事大詰め 陸軍墓地改修近く終了 市まんが図書館 イベントスペース設置

 広島市が南区の比治山公園で進める「平和の丘」の整備計画で、第1期工事が大詰めを迎えている。3月までに陸軍墓地の改修を終え、市まんが図書館にはイベントスペースを設ける。平和記念公園(中区)一帯と並ぶ新たな平和や観光の拠点にするのが狙いで、第2期では市現代美術館の改修などを手掛ける。(明知隼二)

 平和の丘の第1期工事は2017、18年度で、事業費は約2億5千万円を見込む。陸軍墓地は、山頂近くの敷地約2300平方メートルに戦没軍人の墓約3500基がある。市は入り口の老朽化した礼拝堂を取り壊し、屋根付きのエントランスを設置。高齢の遺族たちが歩きやすいように通路を石畳で舗装した。

 墓地は1872年に国が整備。1900年の北清事変で負傷して広島の陸軍病院で亡くなったフランス人兵士の墓や、太平洋戦争中に撃沈された沖縄の学童疎開船「対馬丸」の子どもを悼む銘板もある。市環境衛生課は「追悼の場であると同時に、平和を考える場としても訪れてほしい」としている。

 市まんが図書館は、1階に各種イベントを開けるスペースを設け、外の広場には屋根を付ける。改修で蔵書の一部を移すため、鉄骨2階建ての書庫も増設した。これら施設の改修と並行して、眺望をよくするため樹木の伐採や剪定(せんてい)も進めている。

 一方、被爆建物である頼山陽文徳殿の屋根については、18年度内の改修を延期した。1934年に建築された当時の図面などが残っておらず、耐震診断に時間がかかっている。 市現代美術館の改修を含む第2期工事は、計画通り、2019年度に始める。市政策企画課は「比治山は被爆から復興したデルタを一望できる。自然や文化、歴史が集積する場所でもあり、新たな拠点としたい」としている。

広島市の「平和の丘」計画
 「復興した広島の『今』を実感できる拠点」の整備を掲げ、市が2017年3月に基本計画を策定した。第1期(17、18年度)に続き、第2期(19~21年度)は市現代美術館の改修、ランニングコースや民間事業者によるカフェ、展望施設などの開設を目指す。第3期は多目的広場の整備を盛り込むが、検討中の放射線影響研究所の移転が前提で、時期は決めていない。全体の事業費も未定。

(2019年2月20日朝刊掲載)

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