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社説・コラム

社説 沖縄県民投票 民意は明確に示された

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設計画を巡る県民投票が投開票され、名護市辺野古沿岸部に新基地を造るための埋め立てに「反対」の意思表示が多数を占めた。

 投票した有権者一人一人が、これからの沖縄のことを真剣に考えたに違いない。投票結果に法的拘束力はない。だからといって明確に示された「辺野古ノー」の民意を政府がないがしろにすることは許されない。

 政府はいま一度立ち止まって、新基地建設工事を中止すべきではないか。沖縄の声に耳を傾け、あらためて対話を重ねていくことが求められている。

 沖縄県で県民投票が実施されたのは1996年に次いで2回目になる。前回も米軍基地が争点となり、投票者の9割が基地の整理縮小を求めた。

 それから20年余りたつが、在日米軍の専用施設の7割は沖縄に集中したままだ。安全保障政策上、在日米軍の存在が必要だとしても、なぜ沖縄だけが過重な基地負担を背負い続けなければならないのか。納得できる説明が可能とは思えない。

 辺野古での計画は当初、使用期限を設ける暫定施設のはずだったが、沿岸部を大規模に埋め立てる恒久的な基地に変わった。政府は「普天間の早期返還のための唯一の解決策」と繰り返すだけだ。基地負担を減らすために新たに巨大基地を造るという理屈では、沖縄の人々が反発するのも無理はなかろう。

 当時の知事が2013年末、埋め立て申請を認める前提として求めた「普天間の5年以内の運用停止」はどうなったのか。安倍晋三首相は「最大限努力する」と約束したが、守られていない。何の見通しのないまま今月、その期限を迎えた。

 国の安全保障政策である基地問題を巡って、なぜ2度も県民投票を行う事態に至ったのか、国民全体で考えなければならない。これ以上の基地負担は容認し難いという重い投票結果をしっかり受け止めるべきだ。

 埋め立てを予定する辺野古の海域で極めて軟弱な地盤が見つかっている。安倍首相も今年に入って、地盤改良のための設計変更が必要になることを国会答弁で認めている。

 地盤を固めるために、多数の砂ぐいを打ち込まなければならないという。沖縄県の試算では、完成までに13年かかり、工費は2兆5千億円以上に膨らむ。政府は「実績のある工法で施工は可能」というが、難工事になるのは間違いないだろう。

 工期も工費も大幅に膨らむのは避けられそうにない。何より周辺海域の環境に深刻な影響を与える恐れがある。

 玉城デニー知事は、政府から設計変更申請があっても認めない方針だ。県民投票条例では、示された民意を尊重する義務も課せられている。

 政府はしかし、県民投票に対して後ろ向きだ。菅義偉官房長官は、投票結果にかかわらず辺野古移設を進めると明言している。埋め立てを強行し、既成事実を積み重ねる狙いだろう。

 知事が設計変更を認めなければ、移設計画が頓挫する可能性もある。埋め立てには、国と県の信頼関係が欠かせない。政府に必要なのは県との話し合いだ。辺野古への新基地建設が本当に「唯一の解決策」なのか、計画を再考すべきである。

(2019年2月25日朝刊掲載)

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