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核なき世界へ弾み ローマ法王 11月被爆地訪問へ 中国地方 宗教超え期待の声

 ローマ法王(教皇)フランシスコが11月、被爆地広島、長崎を訪れる見通しとなり、中国地方の宗教者に歓迎の声が広がっている。法王の訪日は1981年の故ヨハネ・パウロ2世以来、38年ぶり。現法王は2013年の就任以降、核兵器廃絶を訴えており、軍縮の動きに弾みがつくとの期待が高まっている。(久行大輝)

 法王は11月に訪日し、約5日間の日程で広島、長崎市などを訪れる見通し。法王は、16世紀に日本への布教を進めたフランシスコ・ザビエルたちが創設したイエズス会の出身。同会が運営する長束修道院(広島市安佐南区)の塩谷恵策神父(79)は「教皇は長年、弱い立場の人に寄り添うなど現場主義を貫いてこられた。広島、長崎に強い関心を寄せる教皇が実際に訪問されるのは意義深い。包容力と行動力で、平和の実現を求める大勢の人々を勇気づけてほしい」と期待する。

「発信力 心強い」

 歓迎するのはカトリック関係者にとどまらない。神道や仏教、キリスト教の宗教者でつくる広島県宗教連盟は1995年以降に計3回、長崎県の宗教者とバチカンを訪れ、歴代法王に被爆地訪問などを要請してきた。被爆者で、95年にバチカンを訪問した草津八幡宮(西区)の澁谷建紀宮司(78)は「長年訴えてきただけに心から歓迎する。被爆者の体験を受け止めてほしい。法王は発信力のある方なので、世界に核廃絶の願いを届ける上で心強い」と喜ぶ。

 法王は他の宗教・宗派との対話にも積極的で、今月3日には歴代法王で初めてイスラム教発祥の地であるアラビア半島にあるアラブ首長国連邦(UAE)を訪問した。広島県宗教連盟の前副理事長で浄土真宗本願寺派善正寺(中区)の中川元慧住職(69)は「法王は被爆地で改めて核廃絶を強く迫る言葉を発してくれるはず。宗教の違いを超えて、平和な世界の実現へ向けた強い意志を再確認できれば」と語る。

「行動の契機に」

 ヨハネ・パウロ2世は81年2月、中区の平和記念公園で「平和アピール」を発表し「戦争は人間の仕業です。広島を考えることは、核戦争を拒否することです。広島を考えることは、平和に対しての責任をとることです」と語り掛けた。

 当時は東西冷戦下で、各国の核兵器開発や軍備増強が進んでいた。テレビ中継の解説者として間近で聞いたカトリック光教会(光市)の肥塚侾司神父(77)は「平和運動が停滞していた時期だけに、多くの市民に大きな勇気と力を与えた」と振り返る。

 現在は米国とロシアの核軍縮の取り組みが不透明な状況だけに「戦争や被爆体験の風化が叫ばれる中、核廃絶の機運を高め、多くの市民が具体的な行動を起こすきっかけになれば」と話している。

(2019年2月25日朝刊掲載)

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