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非核化 期待したのに 被爆者 対話継続求める

 トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は28日、ベトナムの首都ハノイで開催した2日目の首脳会談で北朝鮮の非核化を巡り合意できず、交渉は事実上決裂した。これを受け、広島県内の被爆者からは、落胆の声が漏れた。一方、対話の継続を求める意見もあった。

 広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之理事長代行(76)は「世界が非核化の前進に期待していたのに」と、目に見える進展がなかったことを残念がった。核拡散防止条約(NPT)再検討会議を2020年春に控え「北朝鮮の非核化交渉が停滞し、会議に悪影響を与えなければいいが」とも懸念した。

 非核化と経済制裁の解除を巡って折り合えなかったが、トランプ米大統領は会談後の記者会見で「今後も協議を継続する」とした。もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(74)は「核兵器を持つ米国とロシア、インドとパキスタンの間で緊張が高まる中、対話ができていることが貴重。粘り強く対話を続けることが私たちの願いだ」と訴えた。

 県朝鮮人被爆者協議会の金鎮湖(キム・ジノ)理事長(73)は「トップが1、2回会って解決する問題だとは思わない。一致できない部分を互いに認識できたことは、見えづらいが一つの成果ではないか」と、今後の進展に期待した。

 在日本大韓民国民団(民団)県地方本部韓国原爆被害者対策特別委員会の朴南珠(パク・ナムジュ)委員長(86)は「どちらも核兵器を取引材料としか思っていない。どれほど恐ろしいものか、私は身に染みている。一刻も早くなくしてほしい」と強く求めた。

 広島市立大広島平和研究所の水本和実副所長(61)は「今回は互いが最大限の要求をぶつけ合ったように見える。安易な譲歩ができない国内の政治事情をそれぞれ抱えるのだろうが、朝鮮半島をはじめとする北東アジアの非核化に向け、信頼醸成と妥協点を探る対話を続けてほしい」としている。(明知隼二)

(2019年3月1日朝刊掲載)

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