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原爆の図「署名」 発祥地に 東京都杉並で展示 反核運動の住民描く

 米国のビキニ水爆実験への抗議から広まった原水爆禁止署名運動をモチーフにした画家の故丸木位里・俊夫妻の「原爆の図 第10部 署名」の展示が4日、署名運動発祥地の東京都杉並区の区社会教育センターで始まった。9日まで。

 夫妻の代表作である連作「原爆の図」のうち1956年発表のびょうぶ絵で、縦1・8メートル、横7・2メートル。54年の水爆実験で静岡県焼津市のマグロ漁船第五福竜丸が被曝(ひばく)したことへの怒りから、杉並区の主婦や鮮魚商らが呼び掛けた署名運動を描いた。

 展示初日は、作品を常設展示する埼玉県東松山市の原爆の図丸木美術館から招かれた岡村幸宣学芸員(44)が作品を解説。「明るい未来を予感させようと、非暴力で立ち向かった民衆の力を描いている。時代の空気を的確にとらえた歴史画でもある」と説明し、約60人の来場者が聞き入った。

 焼津港で第五福竜丸の帰りを待つ人たちを描いたシリーズ第9部「焼津」も一緒に展示している。

 杉並区民らでつくる展示会実行委員会の一員で、9歳の時に広島で被爆した平田道正さん(83)は「杉並から広まった反核運動を見つめ直し、未来のためにみんなで何ができるかを考える場にしたい」と話した。期間中は毎日、被爆証言や核問題の講演会もある。(田中美千子)

(2019年3月5日朝刊掲載)

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